Vol.9 社員がチャレンジしない!
◆◇◆ 今回のご相談内容 ◆◇◆
うちの社員は、真面目で責任感もあってしっかり仕事をしてくれていますが、新しいトライをする、業務を改善する改革するというところが、なかなかできていません。
それをやるのは社長の仕事か、と思ったりもしますが、やはり社員に能動的に新しいことにチャレンジしてほしいなと思います。
◆◇◆ 石川からのご回答 ◆◇◆
業務を改善したり、既存業務の枠組みを超えて新規事業を考えたりするということに、ほとんどの日本人は慣れていません。
社会人になるまでに、例えば「体育祭ではなく、何かをやるとしたら何をやるべきか?」などを自分たちで考えて実行する、といったことをほとんどの人がやったことがないからです。
体育祭をやることは決まっていて、その中で何をするかも決まっていて、それをしっかりトレースするということが、学校生活の中で培われてきています。
「去年の体育祭はこうだったから、今年はこういう改善をしよう」といったことを考えて実行する、という改善活動すらほとんど経験していないはずです。
ですから「新規事業を創ったり、業務改善をしたりする経験を全くもっていない」という前提で、社員と接したほうが良いかと思います。
■ 競争社会の中にいることを理解する
しかし、経験が少ないだけで、そういった能力が社員に全くないかというとそんなことはありません。
工夫してチャンスを提供すれば、新規事業を考えたり、業務改善をしたりする意識や能力は確実に高まっていきます。
業務改善の方がハードルが低いので、まずは業務改善についてお話したいと思います。
多くの社員が「業務改善も仕事のうち」とほとんど認識していませんから、まずはその認識を改めるところから教育していくことが重要です。
今の市場環境においては「会社の利益を伸ばし、給料を増やす」以前に、そもそも「会社の利益や給料を維持する」ためにも、日々の業務改善が欠かせません。
例えば、コンビニでも飽きられないように新商品開発を続け、他社の経営努力に負けないようにサービスを磨き続けています。
自動車メーカーであっても、価格維持、販売台数を維持するためには、車両の改善をし続けています。
まずこのような「業務改善し続けることが、競争環境の中では重要なこと」ということ自体を丁寧に繰り返し伝えていきたいところです。
「去年と同じクオリティの体育祭やってちゃダメなんだよ」ってことです。
改善ポイントを見つけて、実行して、クオリティを上げていく必要があります。まずはこのベースの意識付けが必要になるでしょう。
そのうえで「改善ポイントを見つけて、改善策を考えて実行する」ことをしやすくなるようなサポートがあるとよいでしょう。
■ 改善策を考えて行動させるための具体案
一番良いのは直属の上司が、1対1で「改善面談」を部下と定期的に持つことです。
週に一度30分か、月に一度1時間か、それくらいの頻度では「今月の改善点はなんだった?来月は具体的にどこをどう変えてみる?」と部下に問いかけます。
(この定期面談では、部下の成長や進捗を認める褒めるといったこともぜひして下さい)
こういった会社としての支援(時間を持つということ)があれば、ほとんどの社員の改善能力は着実に高まっていきます。
私は今、ある企業様の中で「月1回、ドリルのように若手社員が研修の場を使って振り返りをする」という研修のサポートをしていますが、最近の彼らの伸びは素晴らしいものがります。
ちゃんと毎回改善ポイントを見つけて、改善策を着実に実行しています。
もちろん、全ての施策が成功するのではないのですが、失敗したものもちゃんとあらためて分析して「次はどうするか?」を考えることが、かなり習慣化してきました。
ちゃんと、機会を提供すれば、そのようになっていくのだな、ということを改めて痛感しています。
この研修成果は、報酬との連動は特別に明示はしていなく「研修をちゃんと受けて能力が伸びると、賞与が増える」みたいなところは設定していません。
しかし、場さえちゃんと提供すれば、人間の自然な成長欲求が刺激されるのだな、ということをあらためて実感しています。
■ 新規事業を社員に企画させるハードル
新規事業に関しては、もう少しハードルが高いところがあります。
分かりやすいところでは「社内で新規事業プランコンテストをやる」という打ち手がありますが、これはやれば必ず上手くいくというほど簡単なものではありません。
新規事業に関しては、既存業務の業務改善よりもずっとリスクが大きいところがあります。
「よし、いい新規事業の案だね。実行してみて」と経営者が部下に言ったところで、
- 予算はどうするのか?
- 今やっている仕事を放り出して新規事業の仕事にとりかかっていいのか?
という問題が出てきてしまいます。
最近ではGoogleが「社員が新しい取り組みをする時間を確保する」としていますし、古くは、昔から3M(スリーエム)社が「30%ルール」というものを用意し、社員個人の新しいチャレンジを奨励してきました。
ちなみに、私は住友3M時代の社員に会ったことがあって、「ああ、30%ルール。有名ですよね笑。社内では130%ルールと揶揄されてます」と教えてもらったことがあります。
つまり、本来は通常業務を30%削って(平日5日働くうえで、1.5日分を削って)、その分を新事業の時間にするはずのものが、もう形骸化してしまっていて、上司からの業務指示をこなすだけで普通に平日5日かかるので、プラス30%をやろうと思ったら業務時間が普通に130%になってしまっている、ということでした。
まぁ、普通にこういうことは起こります。
ですから、新規事業プランコンテストをやってもいいし、30%ルールを導入してもいいんですが、それを本当に機能させるにはかなりの苦労がいることは覚悟しておくべきです。
社員に新規事業を生み出す力を期待するのであれば、
- 「新規事業用の予算確保」
- 「アイデアを出した人間を、専念させる体制支援(抜けた部署への人材補填)」
の二つは、必須になるかと思います。
この準備をせずに「社員から新規事業のアイデアが出てこないなぁ」と言っても、それはかなり無理があったりします。
逆に割り切って「新規事業を考えるのは社長のやること」としてしまうほうがすっきりする場合も多いかなと思います。
今回のご相談への回答は以上になります。
本日は、
- 社員がチャレンジしない
- 現状維持で満足してしまう
というお悩みについて、お答えしました。
お役に立つところがあれば幸いです。
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「社員が同じミスを繰り返す・・・」
「会議で活発な議論が生まれない・・・」
「お客様に対する意識が低い・・・」
「評価制度を作ったもののいまいち機能してない感じがする・・・」
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[Vol.9 2018/05/15配信号、執筆:石川英明]
Vol.8 支社間コミュニケーションのコツ
◆◇◆ 今回のご相談内容 ◆◇◆
当社は、東京に本社があり、岐阜に工場があります。
基本的には社員同士は仲良くやっているのですが、物理的に離れていることもあってどうしても、東京・岐阜間でギクシャクしているところもあります。
このような場合、どうしたらよいのでしょうか?
◆◇◆ 石川からのご回答 ◆◇◆
物理的に離れていて、コミュニケーションが必要で、しかしそれが上手くいかずにストレスがかかっている、という場合にまず見直すべきは「コミュニケーションのフォーマット」です。
本社と工場で「このフォーマットでやりとりをする」ということを決めます。
本社が工場に伝えたい情報があり、工場としても本社に聞いとかないと仕事が進められない情報があるはずです。
それらを整理したフォーマットをエクセルやワードなどでまずちゃんと作ることが第一歩です。
できればそのフォーマットづくりを「本社・工場の合同会議」で行いたいところです。
どうして合同会議を行うかというと「その情報が必要な理由・背景」を丁寧に共有しやすいからです。
例えば工場からすると
「納期が●日。だけではなくて、早くてもいいのか、遅くてもいいのか、絶対だめなのか、●日じゃないとダメな理由が知りたい」
といったことがあったりします。
それは工場の稼働管理やライン管理的に、効率的に仕事をしようとすると、納期を多少ずらせるとラクであったりするからなわけですが、東京側はその状況がよく理解できていない、といようなことがあったりします。
そういった注意点を共有しながら「フォーマットを合同で作成する」ということが、まず第一歩です。
これだけでも業務上のコミュニケーションはかなり改善されると思いますが、それでも足りない部分は「オンライン会議」などの場を設けることで、補完することができます。
最近は「Zoom」に代表されるように、無料で使える多人数コミュニケーションツールが発達してきています。
これらのツールを使うことで、物理的な距離を超えて、かなり円滑なコミュニケーションが取れるようになってきました。
東京・岐阜であるということに加えて本社・工場であるという関係性の中で、言葉足らずのために感情面で人間関係がもつれてしまうことなどはよくあることですが、こういったコミュニケーションツールを活用することで、感情面の交流もサポートし「気持ちよく助け合う」関係性を醸成していくことができます。
例えば毎朝とか、週に1回の朝とかに、東京・岐阜で合同の「朝礼」をオンラインで行います。
そして、お互いの仕事に対する「Thanks」を共有する、といった時間を10分でも持つことで、チームワークはぐっと良くなったりします。
これは、本当に多くのクライアント企業の実践の中で実感していることです。
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「会議で活発な議論が生まれない・・・」
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[Vol.8 2018/05/08配信号、執筆:石川英明]
Vol.7 同じミスを繰り返す社員をどうしたらよいか?
◆◇◆ 今回のご相談内容 ◆◇◆
若手の社員が物覚えが悪く、何度注意しても同じミスを繰り返してしまいます。
上司の方も怒り疲れるやら、呆れるやらで、社長の私から見ても、部長の方がかわいそうになってしまうようなところがあります。
採用に失敗したと言えばそこまでかもしれませんが、育成を大事にしたいとも思っています。
こういう場合は、どうしたらよいのでしょうか?
◆◇◆ 石川からのご回答 ◆◇◆
何度も同じミスを繰り返されると、叱るほうも疲れてしまいますよね。その部長の方のストレスはとてもよく分かります。
同じミスに対して、
A社員は一度注意したらミスをしなくなるのに、
B社員の方は何度も繰り返す。
そうだとしたら、やはりB社員に問題があるわけですよね。
仰るように「そういう人材かどうかを採用の段階で見抜く」ということも大切にはなってくると思いますが、今回は採用の話はせずに、育成という観点で話を進めていきたいと思います。
実は、このようなご相談はよくされます。
全社員が同じようにできないのであれば諦めもつきますが、できる部下もいるのに、ミスを繰り返す部下がいると、その社員のことを責めたくなってくるんですよね。
ハッキリ言って「やる気があるのか!」とか「能力が低い!」となじりたくなってしまいます。
しかしまぁ、「やる気があるのか!」「能力が低い!」となじったところで、その部下のミスは減りませんから、これはもうミスを減らして会社が助かる方法を考えるしかありません。
■ そのタイプの人材はなぜ同じミスを繰り返すのか?
同じミスを繰り返さないですむ人材というのは、一度叱られると”意識”のレベルで、対策を考え記憶しておくことができます。
例えば営業訪問をして、持参すべき資料を持ってくるのを忘れてしまった。お客様にも迷惑をかけて、上司からも叱られた。
そういうことがあっただけで
「次は繰り返さないようにしよう」
「今度は、オフィスを出る前に必ず”資料を持ったか?”と確認しよう」
と【考え】ます。
この【考え】たことを記憶し続けておいて、必要な時に思い出すことができます。
次にオフィスを出るときには「あれ、ちゃんと資料を持ったかな?」と自分に確認することができるのです。
だから同じミスを繰り返さないわけです。同じミスを繰り返す人材は、この機能が高くありません。
一つ目はずばり【記憶力が高くない】場合があります。
「普通、こないだ怒られたんだから、次は資料持参についてチェックするだろう!なんでまた忘れるんだ!」
というような”普通”が難しい場合は、ありえます。
このような人材に対して、「今度こそ忘れるなよ!」と怒ることは、残念ながら意味がありません。徒労に終わります。
この人材の【記憶力が高くない】という事実を受け容れた上で、部下をマネジメントしていくという考えが必要になります。
以前、コーチとして働いてもらっていた人材が「コーチングの能力は抜群だが、スケジューリングの能力は極端に低い」というタイプでした。
簡単に言うと、クライアントとのセッション時間をすぐ忘れるのです。
「手帳に書いておいてね」
「はい、手帳に書くようにします。」
それでもまたすっぽかしました。
「手帳に書いたの?」
「はい、書きました。。。」
「手帳を見直さないの?」
「手帳を見る習慣がないですね。。。」
さて困りました。
しかし、コーチとしては本当に優秀ですから続けてもらいたいとも思っています。
「うーんと、そしたら前日に”明日何時からコーチングセッションだよ”って電話するようにしますね。」
「すみません、助かります。」
それでもまたすっぽかしました><
困りました。
しかしやはり、具体的な仕組みを考えてみました。
「そしたら、スマホの予定表に入れてアラートが鳴るようにしょうか。」
「やってみます。」
すっぽかさなくなりました!
・・・こういう「記憶が苦手」なタイプの人材に、「ちゃんと覚えとけよ!」といった記憶力頼みの解決策はほとんど役に立ちません。
「記憶が抜ける」ということを前提に、いかにそれを補完する仕組みを作るか、それを具体的に考えることが効果的です。
二つ目は【応用がきかない】場合があります。
顧客訪問の資料は忘れることはなくなったが、社内会議では「あ、その資料は今印刷してきてません・・・」が相変わらず多発する、というようなケースです。
できる人からすれば「おいおい、同じような話だろう。。。なんで、同じミスを繰り返すんだよ。。。」と言いたくなるところですが、
顧客先に、資料を持っていく
社内会議に、資料を持っていく
というものを似たケース≒同じケースとして処理することが難しいのです。
実はこれは、脳科学的に言うと「記憶力が高すぎる」人に生じる現象です。
記憶力が細かく良すぎる人は、微細な違いも全て「違い」として認識してしまうので応用が効かなくなってしまうのです。
このような場合は、一つ目で考えたような具体的な対策を、それぞれのケースに応じて用意することが効果的です。
三つめは【対策が考えられていない】場合があります。
「なんで資料忘れちゃうんだよ。。。ダメだろ。。。」
「すいません。。。」
「もう忘れんなよ。」
「はい。。。」
という会話で抜けているのは、部下がちゃんと「対策を考えられているか」のチェックです。
ここで
「で、どうしたら同じミスを繰り返さないかね?」
「えっと。。。」
と答えが詰まるようであれば、反省の気持ちはあっても、具体的な策はないということです。具体的な策がなければ、また同じようなミスを繰り返してしまう可能性は高いままです。
部下に対策を考えさせて、その具体的なアイデアを報告させる。
いいアイデアが出てこない場合は、上司の方からアイデアを提示する。
そういったところまでケアすれば、ぐっとミス発生の確率は減ります。
四つ目は【そもそも、それが悪いことだと認識できていない】場合があります。
対策もばっちり考えたのにもかかわらず、また同じミスを繰り返す、というケースもあります。一番腹が立つやつですね。。。
「前倒しでできるだけやっとけって言ったろ!」
「はい。。。」
「だから、期限管理だけじゃなくて仕事の取り掛かり日を決めるってしたろ!」
「はい。。。」
「じゃーなんでやってないんだ!」
「・・・すいません。」
このような場合、部下が「なぜ前倒しでやっておく必要があるのか」を本当にはちゃんとわかっていない可能性があります。
「期限までにやればいいじゃないか」と思っていたら、上司がどれだけ叱っていても「理不尽に怒ってるなぁ」としか思えないわけです。
こういった場合は「前倒しで業務を進めることの合理性」について説明し、理解を得る必要があります。
「そんなもの、前倒しでやったほうがいいに決まっている」では通用しません。通用しないというか、結局部下は変わってくれないのです。
例えばですが
- 確かに通常通りであれば1日で終わる仕事なので前日にやればよい
- しかし、取引先との不確定要素もあり何かあったら3日かかるケースもある
- 早めに取引先に依頼を出しておけば、不測の事態でも対応しやすく、取引先も余裕をもって準備ができる
- だからできるだけ前倒しでやるべき業務である
といったことを、丁寧に説明していきます。
この辺の感覚が上司とまったくすり合っておらず「理不尽に怒られた」と思ってしまう部下もいるわけです。
それは上司・部下、お互いにとって徒労となりますから、そうなるくらいであれば多少面倒でも、部下が理解できるようにしっかりとティーチング・説明をするのがよいでしょう。
今回のご相談への回答は以上になります。お役に立つところがあれば幸いです。
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「会議で活発な議論が生まれない・・・」
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[Vol.7 2018/05/01配信号、執筆:石川英明]