Vol.10 幹部社員の意識を高めるには?
◆◇◆ 今回のご相談内容 ◆◇◆
社長の私一人で頑張っているような状態が続いています。
幹部社員たちには、私と同じような目線で考えられるようになって欲しいのですが、なかなかそうなってもらえていません。
一体、どうしたら幹部社員たちの意識は高まっていくのでしょうか?
◆◇◆ 石川からのご回答 ◆◇◆
「社長」と「社長以外」の溝は、なかなかに深いものがあります。
これは、これまで数多くの企業様のご支援をさせていただいてきて実感するところです。
社長はまさに「最終責任者」です。
そして、それ以外の人たちは「最後の責任は、自分以外の誰かが負う」と思っています。同時に「最終的な決定権は、自分にはない」とも思っています。
もう一つ、端的な観点としては「転職」というものがあります。
私は、多くの社長様にお会いしてきましたが「転職」という選択肢を持っている社長はほぼ皆無でした。
ほぼ全員の社長様は「自社をどう経営していくか」しか考えていません。
しかし、社長以外は「転職」という選択肢を持っています。
「この会社がダメになったら」
「この会社が合わなくなったら」
転職しよう、そういう考えを、心のどこかでは持っているわけです。
この差は、かなり大きなものがあります。
ですから、今回ご相談いただいた内容に対しては、私としては「お気持ちはとてもよく分かります。。。」「しかしながら、これはそんなに簡単な話ではありません。。。」というのが、まず最初の率直な気持ちなのです。
とは言え、それだけ済ませてはこのメルマガの意味がありませので、難しいことだということは前提の上で、どういうことをしていけば少しでも幹部の方たちが社長目線に近づいていけるのかということについて書いてみたいと思います。
■ 社長と幹部の違いは”意志”
社長は
- 「会社をこうしていこう」
- 「会社をこうしていかなければ」
といった意志を、自然と持っていらっしゃいます。
それは、トップとしての責任感だったり、リーダーとしての情熱だったりします。
しかし、幹部の方は前述したように
- 「最後は社長が決めることだ」
- 「社長が決めたことに従うのだ」
と思っている方が大半です。
まずは、この溝を埋めるようにしていくことが一つです。
簡単に言うと
「社長どうしましょう?」
「こうしないとダメだろう!」
と指示や答えを与えていたコミュニケーションを変える、ということです。
「社長どうしましょう?」
と聞かれたら
「君が、どうしたいのか、どうするべきだと考えているのか、それをまとめて提案しに来てくれ」
と返す、ということです。
これをやり始めると、最初は禁断症状が出てきます。
幹部の側にもですが、社長の側にもです。
社長の側の禁断症状としては
- 「アドバイスしたい!」
- 「答えを教えてあげたい!」
という症状が出てきます。
幹部の側の禁断症状としては
- 「なんで教えてくれないんだよ」
- 「今までは教えてくれてたじゃないか」
- 「社長、職務放棄かよ」
という感じの症状が出てきます。
しかし、この禁断症状を乗り越えると幹部からの「私はこのようにしていきたいと思っていますが、社長よろしいでしょうか?」という”意志”が出てくるようになってきます。
(実際にそうなるのには、1ヶ月でなる会社もあれば、1年以上かかる会社もあります)
まずは、大方針として、社長と幹部の溝を埋めるには「君はどう考えるんだ?」と”問う”ということが最重要だと誤認識ください。
■ 問うことの難しさ
さて、実際に問うだけで、幹部が目覚ましく成長するのであれば、どの社長もそれを実践して、その効果を享受しているはずですが、ことはそう簡単ではありません。
次に出てくる壁は「問うても、間違った回答や、質の低い回答しか出てこない」というものです。
この壁にぶち当たって「えーい!やはり自分が指示・指導するしかない!」と元に戻る経営者の方も多いのです。
(そして、それが悪いわけでも間違いなわけでもありません)
質の低い回答が出てきた場合は、「より質の高い問いで考えさせる」というのが重要になります。これがいわゆるコーチングの技術です。
例えば単純に「どうやったら売上を伸ばせるだろうか?」と問うて、「頑張ります!」と返ってきたとします。
さて、ここから腕の見せ所です。
「うんうん、頑張る。いいね。具体的に、どう頑張ると前年同月より売上が増やせそうだろう?」
「そうですね、まずはお客様のリストに一通りもう一度連絡してみます」
「おお、いいね。どんな連絡の仕方だとお客様からの反応がいいだろうね?」
「・・・。反応・・・。まずは連絡してみますが。。。」
「自分に業者から連絡がきたとして、”最近いかがですか?”って聞かれたら、どう思う?」
「・・・、いや、お前に今は用はないよとかって思いますね。。。」
「僕らはそう思われちゃ困るよね?」
「ですね。。。うーん。。。」
「逆にさ、今まで”この業者、いい連絡してくるなぁ”ってのはあった?」
「うーん。。。あ!割とよく”競合がこんな動きし始めたのご存知ですか?”って連絡してくる人がいて、結構知らないこと教えてくれるんで助かってる、という人が、一人だけいますね」
「うんうん。」
「そうか!ただ連絡するだけでなく、お客さんの競合の動きとかをちょっと調べてから電話するとかするだけで違いそうですね!やってみます!」
「うんうん!」
・・・このような感じで「問いかける」「引き出す」ということがしていければ最高です。
■ 成功体験を積ませる
”自分なりに解を導き出して、実行してみて、成果が上がる”というサイクルを経験してくると、だんだんと仕事が楽しくなってきます。
そして、仕事への能動性や積極性が高まってきます。
「問いかける」というのはちょっと手間です。
最初から「競合調査をして、その話をお土産に顧客リストに電話せよ!」と指示したほうが簡単です。
しかし「自分なりに考えてみて、解を導き出して、実行してみて、成果が上がる」という経験を積むことができません。
「言われた通りやったらできた」
もしくは
「言われた通りやったのにできなかった」
という経験しか残らないのです。
しかし「教える」から「問いかける」へ方針転換をして、幹部自身が「自分で考える」ことが身についてくると、これが変わってくるわけです。
こうなってくると好循環で
「自分で考える」
⇒「結果が出て楽しい」
⇒「もっと自分で勉強したくなる」
⇒・・・ というようになってきます。
実際に、私がご支援してきているある会社様では、当初は「社長一人で頑張っている感じで・・・」という状態でいらっしゃったのが、かなり幹部と社長の目線が近づいてきました。
これは
- 「会社の目標設定について問いかける」
- 「会社の営業戦略について問いかける」
- 「会社の人事制度について問いかける」
といったことを愚直に繰り返してきた結果です。
正直なところ、社長と幹部との間にまだ”差”はあります。
ありますが、その差は以前よりもかなり小さくなってはいて、社長様からもその点は非常にご満足いただいています。
完全に差をなくすことは難しいですが、差を縮めていくことはできますので、本日の内容も参考にしていただければ幸いです。
今回のご相談への回答は以上になります。お役に立つところがあれば幸いです。
株式会社Co-ducationの幹部研修「マスタリー・コース」では、企業幹部(最大12名)が集まって、幹部個人の自分自身の内発的なビジョンと、会社のビジョン・方向性とのエンゲージメントを高めることを重視しています。
「社長が孤軍奮闘して幹部は受身的な姿勢でいる」ということでも組織力はなかなか高まらず、一方で「幹部一人一人はやる気に満ちているがバラバラでいる」ということでも、効果的に事業は推進されていきません。
幹部一人一人が「このビジョンは、自分が実現したいビジョンだ」と思えるようなビジョンが共有されている状態。また同時に、それぞれの個性や持ち味、才能への理解が深く、適材適所・相乗効果が大きく創出されている状態。
このような「経営チーム」を生み出していくご支援もしております。
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「社員が同じミスを繰り返す・・・」
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[Vol.10 2018/05/22配信号、執筆:石川英明]
Vol.9 社員がチャレンジしない!
◆◇◆ 今回のご相談内容 ◆◇◆
うちの社員は、真面目で責任感もあってしっかり仕事をしてくれていますが、新しいトライをする、業務を改善する改革するというところが、なかなかできていません。
それをやるのは社長の仕事か、と思ったりもしますが、やはり社員に能動的に新しいことにチャレンジしてほしいなと思います。
◆◇◆ 石川からのご回答 ◆◇◆
業務を改善したり、既存業務の枠組みを超えて新規事業を考えたりするということに、ほとんどの日本人は慣れていません。
社会人になるまでに、例えば「体育祭ではなく、何かをやるとしたら何をやるべきか?」などを自分たちで考えて実行する、といったことをほとんどの人がやったことがないからです。
体育祭をやることは決まっていて、その中で何をするかも決まっていて、それをしっかりトレースするということが、学校生活の中で培われてきています。
「去年の体育祭はこうだったから、今年はこういう改善をしよう」といったことを考えて実行する、という改善活動すらほとんど経験していないはずです。
ですから「新規事業を創ったり、業務改善をしたりする経験を全くもっていない」という前提で、社員と接したほうが良いかと思います。
■ 競争社会の中にいることを理解する
しかし、経験が少ないだけで、そういった能力が社員に全くないかというとそんなことはありません。
工夫してチャンスを提供すれば、新規事業を考えたり、業務改善をしたりする意識や能力は確実に高まっていきます。
業務改善の方がハードルが低いので、まずは業務改善についてお話したいと思います。
多くの社員が「業務改善も仕事のうち」とほとんど認識していませんから、まずはその認識を改めるところから教育していくことが重要です。
今の市場環境においては「会社の利益を伸ばし、給料を増やす」以前に、そもそも「会社の利益や給料を維持する」ためにも、日々の業務改善が欠かせません。
例えば、コンビニでも飽きられないように新商品開発を続け、他社の経営努力に負けないようにサービスを磨き続けています。
自動車メーカーであっても、価格維持、販売台数を維持するためには、車両の改善をし続けています。
まずこのような「業務改善し続けることが、競争環境の中では重要なこと」ということ自体を丁寧に繰り返し伝えていきたいところです。
「去年と同じクオリティの体育祭やってちゃダメなんだよ」ってことです。
改善ポイントを見つけて、実行して、クオリティを上げていく必要があります。まずはこのベースの意識付けが必要になるでしょう。
そのうえで「改善ポイントを見つけて、改善策を考えて実行する」ことをしやすくなるようなサポートがあるとよいでしょう。
■ 改善策を考えて行動させるための具体案
一番良いのは直属の上司が、1対1で「改善面談」を部下と定期的に持つことです。
週に一度30分か、月に一度1時間か、それくらいの頻度では「今月の改善点はなんだった?来月は具体的にどこをどう変えてみる?」と部下に問いかけます。
(この定期面談では、部下の成長や進捗を認める褒めるといったこともぜひして下さい)
こういった会社としての支援(時間を持つということ)があれば、ほとんどの社員の改善能力は着実に高まっていきます。
私は今、ある企業様の中で「月1回、ドリルのように若手社員が研修の場を使って振り返りをする」という研修のサポートをしていますが、最近の彼らの伸びは素晴らしいものがります。
ちゃんと毎回改善ポイントを見つけて、改善策を着実に実行しています。
もちろん、全ての施策が成功するのではないのですが、失敗したものもちゃんとあらためて分析して「次はどうするか?」を考えることが、かなり習慣化してきました。
ちゃんと、機会を提供すれば、そのようになっていくのだな、ということを改めて痛感しています。
この研修成果は、報酬との連動は特別に明示はしていなく「研修をちゃんと受けて能力が伸びると、賞与が増える」みたいなところは設定していません。
しかし、場さえちゃんと提供すれば、人間の自然な成長欲求が刺激されるのだな、ということをあらためて実感しています。
■ 新規事業を社員に企画させるハードル
新規事業に関しては、もう少しハードルが高いところがあります。
分かりやすいところでは「社内で新規事業プランコンテストをやる」という打ち手がありますが、これはやれば必ず上手くいくというほど簡単なものではありません。
新規事業に関しては、既存業務の業務改善よりもずっとリスクが大きいところがあります。
「よし、いい新規事業の案だね。実行してみて」と経営者が部下に言ったところで、
- 予算はどうするのか?
- 今やっている仕事を放り出して新規事業の仕事にとりかかっていいのか?
という問題が出てきてしまいます。
最近ではGoogleが「社員が新しい取り組みをする時間を確保する」としていますし、古くは、昔から3M(スリーエム)社が「30%ルール」というものを用意し、社員個人の新しいチャレンジを奨励してきました。
ちなみに、私は住友3M時代の社員に会ったことがあって、「ああ、30%ルール。有名ですよね笑。社内では130%ルールと揶揄されてます」と教えてもらったことがあります。
つまり、本来は通常業務を30%削って(平日5日働くうえで、1.5日分を削って)、その分を新事業の時間にするはずのものが、もう形骸化してしまっていて、上司からの業務指示をこなすだけで普通に平日5日かかるので、プラス30%をやろうと思ったら業務時間が普通に130%になってしまっている、ということでした。
まぁ、普通にこういうことは起こります。
ですから、新規事業プランコンテストをやってもいいし、30%ルールを導入してもいいんですが、それを本当に機能させるにはかなりの苦労がいることは覚悟しておくべきです。
社員に新規事業を生み出す力を期待するのであれば、
- 「新規事業用の予算確保」
- 「アイデアを出した人間を、専念させる体制支援(抜けた部署への人材補填)」
の二つは、必須になるかと思います。
この準備をせずに「社員から新規事業のアイデアが出てこないなぁ」と言っても、それはかなり無理があったりします。
逆に割り切って「新規事業を考えるのは社長のやること」としてしまうほうがすっきりする場合も多いかなと思います。
今回のご相談への回答は以上になります。
本日は、
- 社員がチャレンジしない
- 現状維持で満足してしまう
というお悩みについて、お答えしました。
お役に立つところがあれば幸いです。
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[Vol.9 2018/05/15配信号、執筆:石川英明]
Vol.8 支社間コミュニケーションのコツ
◆◇◆ 今回のご相談内容 ◆◇◆
当社は、東京に本社があり、岐阜に工場があります。
基本的には社員同士は仲良くやっているのですが、物理的に離れていることもあってどうしても、東京・岐阜間でギクシャクしているところもあります。
このような場合、どうしたらよいのでしょうか?
◆◇◆ 石川からのご回答 ◆◇◆
物理的に離れていて、コミュニケーションが必要で、しかしそれが上手くいかずにストレスがかかっている、という場合にまず見直すべきは「コミュニケーションのフォーマット」です。
本社と工場で「このフォーマットでやりとりをする」ということを決めます。
本社が工場に伝えたい情報があり、工場としても本社に聞いとかないと仕事が進められない情報があるはずです。
それらを整理したフォーマットをエクセルやワードなどでまずちゃんと作ることが第一歩です。
できればそのフォーマットづくりを「本社・工場の合同会議」で行いたいところです。
どうして合同会議を行うかというと「その情報が必要な理由・背景」を丁寧に共有しやすいからです。
例えば工場からすると
「納期が●日。だけではなくて、早くてもいいのか、遅くてもいいのか、絶対だめなのか、●日じゃないとダメな理由が知りたい」
といったことがあったりします。
それは工場の稼働管理やライン管理的に、効率的に仕事をしようとすると、納期を多少ずらせるとラクであったりするからなわけですが、東京側はその状況がよく理解できていない、といようなことがあったりします。
そういった注意点を共有しながら「フォーマットを合同で作成する」ということが、まず第一歩です。
これだけでも業務上のコミュニケーションはかなり改善されると思いますが、それでも足りない部分は「オンライン会議」などの場を設けることで、補完することができます。
最近は「Zoom」に代表されるように、無料で使える多人数コミュニケーションツールが発達してきています。
これらのツールを使うことで、物理的な距離を超えて、かなり円滑なコミュニケーションが取れるようになってきました。
東京・岐阜であるということに加えて本社・工場であるという関係性の中で、言葉足らずのために感情面で人間関係がもつれてしまうことなどはよくあることですが、こういったコミュニケーションツールを活用することで、感情面の交流もサポートし「気持ちよく助け合う」関係性を醸成していくことができます。
例えば毎朝とか、週に1回の朝とかに、東京・岐阜で合同の「朝礼」をオンラインで行います。
そして、お互いの仕事に対する「Thanks」を共有する、といった時間を10分でも持つことで、チームワークはぐっと良くなったりします。
これは、本当に多くのクライアント企業の実践の中で実感していることです。
今回のご相談への回答は以上になります。お役に立つところがあれば幸いです。
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