組織のお悩みQ&A

「社員が同じミスを繰り返す…」「会議で活発な議論が生まれない…」「評価制度がイマイチ機能してない感じがする…」「部下が同じミスばかり繰り返す…」 組織運営上のあらゆるお悩みについて、100社以上を支援してきた組織コンサルタントの石川がお答えしていきます!

Vol.18 社内に経営理念を浸透させたい



◆◇◆ 今回のご相談内容 ◆◇◆

経営理念を社内に浸透させるために、効果的な方法を教えてください。

 

 
◆◇◆ 石川からのご回答 ◆◇◆

経営理念を社内に浸透させていくにあたって重要な点がいくつかあります。

そもそも経営理念やビジョンといったものを社内に示すということの目的は、「経営理念・ビジョンに向けて一人一人の意欲を喚起する」「経営理念・ビジョンに向けて全社の一体感を醸成する」といったことにあります。

ですから、これらのことが達成できなければ、経営理念を浸透させていったことになりません。
   

もし仮に「毎日暗唱する」ということを、社員に要求したとします。毎朝、朝礼で経営理念を全員で唱和する、という方法でもいいかもしれません。

この場合、社員は「暗記」はするかもしれませんが、本当に経営理念に向けて、意欲がかき立てられたり、一体感が醸成されたりしているでしょうか。

もしかしたら「全員で唱和している時間」は、一体感を醸成しているということもあるかもしれませんが、社員が「やりたくもないのに、やらされている」と思っていたとしたら、意欲を喚起し、一体感を醸成するどころか、むしろ理念やビジョンから心は離れてしまっていると言っていいでしょう。

※以下、表現をビジョンに統一します

 

■ 意欲がかき立てられる、とはどういうことか?

意欲がかき立てられるということは、そのビジョンが【魅力的だと感じる】ということです。

例えば「購買意欲」を考えてみます。いくら論理的に「この商品がいかに素晴らしいか」を説明されたとしても、それで買いたいと思うかどうかは全然別のことです。「自分は全く興味がない」ということもあり得ます。

例えば「このピアノは本当に素晴らしいですよ!歴史的にもホニャララ。技術的にもホニャララ。このデザインが本当に素晴らしくホニャララ。ホニャララという一流オーケストラでも使われ…」などと説明されたところで、そもそもピアノに興味がない人が聞いても 「欲しい!買いたい!」などとはなりません。

もしピアノに興味がある人であれば、その説明を聞いて魅力的だと感じるかもしれません。手持ちのお金がちょっと足りなくても、頑張って貯金して買おう、なんて思うかもしれません。

「頑張って貯金して買おう」とまで思わせたら、それは行動の変化につながっており、まさに「意欲をかき立てた」ということができるでしょう。
   

ビジョンを社内に示す際にも、このように「意欲をかき立てる」ことが必要なのです。(というか、そのためにこそビジョンはあります)

例えば、貯金なんか興味がなかった人が、頑張って貯金してでも買おうと思う。残業なんてしようと思わなかった人が、残業してでも成し遂げようとする。

そういう変化をもたらすビジョンこそが、素晴らしいビジョンなわけです。
    

ここで少し話は変わりますが、人が行動に移すまでには、感情→思考→行動(→成果)という3段階を経ます。

f:id:Co-ducation:20200108144704j:plain

 

ですから、まずビジョンは感情(意欲)を喚起することが重要です。心を動かす、ということです。
   

では、心を動かす、際のポイントはなんでしょうか?「映画を見て、心を動かされた」「偉人伝を読んで、心を動かされた」「スポーツの試合を見て、心を動かされた」というようなことは、比較的あることかと思います。

「論文を読んで、心を動かされた」「データを見て、心を動かされた」となると、どうでしょうか?「論文を読んで、納得した」 「データを見て、理解した」というのはあるかもしれません。

これは「感情→思考→行動」の3段階でいうと、2段階目の思考に対して効く要素だということです。


■ 熱量、という要素

2019年秋に開催されていたラグビーワールドカップで、日本は史上初の決勝トーナメント進出を決めましたが、その姿に心を動かされた方も多いのではないかと思います。

W杯やオリンピックなどを見ていると、選手が真剣に競技している姿を見るだけで感動してしまうことがあります。(だからこそ、箱根駅伝などは、ただ走っている姿を流しているだけのTV番組にもかかわらず毎年高視聴率なのでしょう)
   

心が動かされるのは、言語やロジックよりも、表情、姿勢などからダイレクトに伝わってくる熱量といったものが大きく影響します。また、箱根駅伝などもそうですが、出場選手の「ストーリー」が語られます。

期待されて入学したが怪我をしてしまって、10人に選ばれず、けがを乗り越えて、4年生にして初めての箱根駅伝出場です!といったストーリーが入ると、より一層その選手を応援したくなってしまったりします。

熱量。ストーリー。これらは、心を動かすうえで、とても重要な要素なのです。

「映画を見て、心を動かされた」
「偉人伝を読んで、心を動かされた」
「スポーツの試合を見て、心を動かされた」

こういったものは、熱量、ストーリーと言ったものが効果的に働いています。

 

f:id:Co-ducation:20200108144826j:plain

 

逆に言えば、ビジョンを社内に浸透させていくには熱量やストーリーを有効活用すればよいのです。

「当社のビジョンは、5年以内に年商50億円を達成することです」と淡々と語っていては、ビジョン提示による意欲喚起はなかなか望めないかもしれません。

しかし、例えば社長が「絶対5年以内に50億達成する!どんな困難があっても。そうした時に全員成長した!という喜びが待っている!絶対その成長の喜びを味わわせてやる!」とプレゼンしたら、(全員ではないにしても)その熱量から、意欲を喚起される社員も増えるかもしれません。

「5年以内に50億達成するということは、どんな素晴らしいことが(ストーリーが)あるかというと・・・」と語られれば、そのストーリーに耳を傾け、そこから意欲を喚起される社員もいるでしょう。

ビジョンを社内に浸透させていく際には、こういった工夫が欠かせません。

 

■ ストーリー的に伝えるのは”例えばね”

「50億達成できたとするでしょう。そうしたら、例えばね。その時には絶対人も増えて、部下も増えてる。上司になった人は、人を育てる苦労も経験してるだろうけど、部下を育てる喜びを感じてるよ。ああ、こいつ成長したなぁとか言って上司同士で飲んで笑ってるわけよ。」

これは「例えばね」の例えですが、こういうように”場面がイメージできる”ように話すことは、心を動かしていくうえでとても効果的です。
    

「他にもさ。例えばね。50億円達成したら、やっぱり少なからずボーナスも増えてるよね。それでさ、人によってはそれで家族と旅行に行ったりするわけだよね。今までよりちょっといいホテルで、今までよりよっといい食事したりしてさ。すごい幸せを感じる時間でさ。そういうことだって、50億円達成のご褒美の一つだよね」

これもまた、場面がイメージされるものです。

ストーリー的に語るというのは、何も長々とした起承転結の物語を語らなければならないわけではありません。”場面がイメージされる” ということが重要なのです。

ですから「例えばね・・・」という言葉を、ビジョンを語る際に多用すること。これによって、確実にビジョンによって意欲を喚起していく度合いを高めていくことができます。

いかがだったでしょうか。
   

実はビジョンの浸透には、一つ重要な要素があります。それは、「夢物語だな」ではなく、 「頑張れば実現できそうだ」ということです。これについては、また別稿でお伝えします。

 

 

いつも最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。

 

当ブログは、毎週火曜8時配信の無料公式メルマガのバックナンバー集です。事務局スタッフが気まぐれで更新していきます。

最新記事が気になる方は、是非、公式メールマガジンにご登録ください♪


また、公式メルマガ読者の方限定で、組織マネジメントについてのご相談をお受けしています。

「社員が同じミスを繰り返す・・・」
「会議で活発な議論が生まれない・・・」
「お客様に対する意識が低い・・・」
「評価制度を作ったもののいまいち機能してない感じがする・・・」


御社のあらゆるお悩みについて100社以上を支援してきた組織コンサルタント・石川がお答えしています。ご興味のある方は、こちら↓↓
⇒ 無料メルマガ 「組織のお悩みQ&A」を購読

 

[Vol.18 2018/07/31配信号、執筆:石川英明]

 

Vol.17 社員に会社の方向性が見えないと言われました(後編)



◆◇◆ 今回のご相談内容 ◆◇◆

ビジョンや全社の目標といったものについてお聞きしたいことがあります。

当社では、明確にビジョンを示しているにも関わらず、先日ある社内アンケートを行ったところ

  • 「会社の方向性が見えない」
  • 「目指すところをはっきりと示してほしい」

といった声がそれなりの割合で出てきていました。


正直なところ、ショックがありました。

どうしてこのようなことが起こってしまうのでしょうか?

 
◆◇◆ 石川からのご回答 ◆◇◆

このご質問に対しては、二つの層の回答があります。


一つは「ビジョンを示しているつもりでも、その意味合いをしっかりと浸透させるにはかなりの努力が必要です」ということです。

もう一つは「社員から方向性が見えないといった意見が出てくる場合、ビジョンの問題よりも直属の上司とのコミュニケーションの問題の可能性があります」ということです。

今回は、前者の視点からご説明します。

 

■ 目標が「腹落ち」しているか


例えば「3年以内に年商30億円達成を目指す!」といった目標を掲げたとしても、全社員がその目標が「腹落ち」しているかというと、そんなことはありません。


これは以前、ある経営者の方のご相談にのっていたときに聞いたことです。

「そうした目標に対して誰もついてきていない。正直、自分以外は誰もそれを目標として本気で頑張っているようには見えない。。。困ったものですね。。。」


このような状態は、残念ながら割と起こりがちなのです。


社長からすれば「3年以内に年商30億円達成するぞ!」というのはワクワクする目標かもしれません。

それは、

会社が成長すること自体が喜びかもしれませんし、社員数が増えることが喜びかもしれませんし、年商が拡大して役員報酬が増えることがイメージできるかもしれません。

はたまた、社長同士の集まりの場で「30億円までいったの!すごいね!」と賞賛されることが想像されるかもしれません。


つまり、ただの年商30億円ではないわけです。
社長にとっては。


社長にとって年商30億円達成は・・・

  • 会社の成長(の喜び)
  • 社員数増(の喜び)
  • 役員報酬
  • 他の経営者からの賞賛・尊敬の目

というような意味合いがイメージできていたりするわけです。


しかし社員のAさんにとっては、年商30億円達成は・・・

  • 会社が、大きくなること?
  • 新しい人が増えて、人間関係が大変になる?
  • 仕事量が多くて、ノルマが大変?

くらいのイメージしか湧いていなかったりするわけです。

 

f:id:Co-ducation:20180722153146j:plain

 

■ 【社員目線】の素晴らしい点も伝えていく


そういうときでもアンケートを取ると「目指すところを示してほしい」といった回答になることがあります。

「30億円達成したら、給料がいくらになるのかちゃんと示してほしい」とはなかなか書かないからです。


このような場合は、年商30億円を達成したときの【社員目線】の素晴らしい点も伝えていくことが重要です。


例えば・・・・

  • 社員数が増えて「部下を持つ・育てる」という経験を積める!
  • 利益額が向上すれば、給料が増える!
  • 業務内容の幅が広がり、いろんな仕事に挑戦するチャンスが増える!
  • それだけ評価してくれるお客様がいることは、誇りに思えることが多い!
  • 業界内で目立った存在になり「●●社なんですね!色々教えてください!」と言われることになる!

・・・というようなことも、伝えていったり、社員自身に想像してみてもらったりすることが重要になってきます。


このあたりのことがイメージできてくると「3年以内に30億円達成!」という目標に対しても、社員も「ハッキリと方向性を示してもらえている」というように感じやすくなってくるのです。



単純に「年商30億円」だけでは、社員にとってはノルマにしか思えない可能性もあります。

しかしその目標達成が、社員にとっても素晴らしい価値が多々ある、ということをプレゼンテーションしていくことは、組織のリーダーたる経営者にとって、とても重要な仕事になるということです。


ご質問に対する回答は以上となります。いかがだったでしょうか。

 

 

いつも最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。

 

当ブログは、毎週火曜8時配信の無料公式メルマガのバックナンバー集です。事務局スタッフが気まぐれで更新していきます。

最新記事が気になる方は、是非、公式メールマガジンにご登録ください♪


また、公式メルマガ読者の方限定で、組織マネジメントについてのご相談をお受けしています。

「社員が同じミスを繰り返す・・・」
「会議で活発な議論が生まれない・・・」
「お客様に対する意識が低い・・・」
「評価制度を作ったもののいまいち機能してない感じがする・・・」


御社のあらゆるお悩みについて100社以上を支援してきた組織コンサルタント・石川がお答えしています。ご興味のある方は、こちら↓↓
⇒ 無料メルマガ 「組織のお悩みQ&A」を購読

 

[Vol.17 2018/07/17配信号、執筆:石川英明]

 

Vol.16 社員に会社の方向性が見えないと言われました(前編)



◆◇◆ 今回のご相談内容 ◆◇◆

ビジョンや全社の目標といったものについてお聞きしたいことがあります。

当社では、明確にビジョンを示しているにも関わらず、先日ある社内アンケートを行ったところ

  • 「会社の方向性が見えない」
  • 「目指すところをはっきりと示してほしい」

といった声がそれなりの割合で出てきていました。


正直なところ、ショックがありました。

どうしてこのようなことが起こってしまうのでしょうか?

 
◆◇◆ 石川からのご回答 ◆◇◆

このご質問に対しては、二つの層の回答があります。


一つは「ビジョンを示しているつもりでも、その意味合いをしっかりと浸透させるにはかなりの努力が必要です」ということです。

もう一つは「社員から方向性が見えないといった意見が出てくる場合、ビジョンの問題よりも直属の上司とのコミュニケーションの問題の可能性があります」ということです。

まず、後者の視点からご説明します。

 

■ 上司の指示に矛盾を感じて起こる

一般社員が「会社の方向性が見えない」というような場合、


それは具体的には上司から
「おい、もっとミスないように質の高い仕事をしろよ」と言われ、

その翌日には

「おい、のそのそやってるなよ、スピーディに仕事しろよ」と言われた、


みたいなことを指していることが多いのです。


これは一般社員からすると「質と、スピード!どっちなんだよ!ちゃんと方向性を示してよ!矛盾したこと言わないでよ!」みたいな気持ちになるわけです。

これが「方向性が見えない」といったアンケート記入になることはよくあります。



実際の”仕事”においては、矛盾したものを引き受けながらやっていかなければならないものです。


「利益」などということはその最も象徴的なもので、経費を減らしつつ、売上を伸ばす必要がある、ということになります。

ものすごくコストをかけて売上を伸ばしても、利益が減ってはあまり意味がありません。


そういう「矛盾した要素を引き受けながらやる」ことが仕事なわけですが、こういった点を理解していない社員からすると、上司が「質も!スピードも!」と言ってくると「矛盾した理不尽な指示を出してくるダメな上司」というような印象を持ってしまうのです。


この問題を解決しない限り、「全社のビジョンについてより一層語る時間を増やし、社員の理解・共感を深める」といった努力をしたとしても、社内アンケートを取ると相変わらず「しっかり方向性を示してほしい」といった不満が、社員から出てきてしまうのです。

 

f:id:Co-ducation:20180722151604j:plain

 

■ 社員に大人になってもらう

この問題を解決するには、社員に「矛盾したものを引き受ける必要がある」ということを理解してもらう必要があります。

これは、ひらたく言えば「社員に大人になってもらう必要がある」ということです。



社員に大人になってもらうには少し工夫が要ります。

社長や上司から直接「質もスピードもどっちも大事に決まっているだろう!」と教えてあげたところで、「なんだよ無茶言いやがって」となってしまう危険性が大いにあるからです。


これは、宣伝のようになってはしまいますが、こういう時こそ外部の研修講師やコンサルタントが「教える」方が、社員も一般論として受け入れやすく、理解しやすいという面があります。

 

もう一つは、適切なゲームや謎かけのような形にして”自分たち自身で考えてもらう”ということです。

「教える」よりは「考えてもらう」のです。


「仕事で、質を無視してスピードだけ追求していたらどうなると思う?逆に、スピードを無視して質だけ追求してたらどうなると思う?お客さんから見たらどうだろう?」と。

「確かにめちゃくちゃ美味しいけれど、入店してから3時間一品も出てこないお店。確かにすぐ出てくるけど、焦げてたり、冷めてたりするのしか出てこないお店。どう?」というように。


こういったお題を、社員数人にグループ検討してもらうというようなプロセスをとることで「社長、やっぱり、お客さん目線で考えると、質もよくて、スピードも速くて、かつ安い料理店がいいです」という、当たり前の結論をちゃんと持ってきてくれたりします。

 

そして、自分たちでその結論を出すことは、社長から100回同じ話を説教されるよりも効果が高かったりするのです。


今回は後者の視点から書きましたが、前者の視点も重要ですので、その点はまた次回お伝えしたいと思います。

 

いかがだったでしょうか。

 

当ブログは、毎週火曜8時配信の無料公式メルマガのバックナンバー集です。事務局スタッフが気まぐれで更新していきます。

最新記事が気になる方は、是非、公式メールマガジンにご登録ください♪


また、公式メルマガ読者の方限定で、組織マネジメントについてのご相談をお受けしています。

「社員が同じミスを繰り返す・・・」
「会議で活発な議論が生まれない・・・」
「お客様に対する意識が低い・・・」
「評価制度を作ったもののいまいち機能してない感じがする・・・」


御社のあらゆるお悩みについて100社以上を支援してきた組織コンサルタント・石川がお答えしています。ご興味のある方は、こちら↓↓
⇒ 無料メルマガ 「組織のお悩みQ&A」を購読

 

[Vol.16 2018/07/03配信号、執筆:石川英明]