Vol.15 人事評価と報酬は連動しているべきなのか
◆◇◆ 今回のご相談内容 ◆◇◆
前回までのメルマガで「なぜ評価制度が必要なのか」というお話をお聞きしてきましたが、
会社が期待する項目に沿って人事評価制度をつくった後、
実際に、社員に自分の評価を上げようとやる気を持って仕事をしてもらうためには、やはり人事評価と昇給制度を連動させておく必要があるのでしょうか。
◆◇◆ 石川からのご回答 ◆◇◆
ご質問ありがとうございます。
こちらはまさに、前回のメルマガでまた別の機会にとお伝えしていた内容ですね。
それでは、今回は、「評価と報酬は連動させるべきなのかどうか?」という部分について解説したいと思います。
■ 評価と報酬は連動させるべきなのか
このことについては、諸説あります。
しかし、結論から言うと、私は評価と報酬は基本的に連動させるべきだと考えています。
このことが難しいのは、本来、報酬と連動するものは評価ではなく、業績だからです。
利益が増えれば、報酬も増える。
これはとてもシンプルなことです。
しかし、評価が高いからと言って利益が増えるとは限りません。
前回のサッカー選手の例えでいえば、ある選手がスタメンを獲れるほどに成長したとして、しかしチームが勝つとも限らないし、優勝して賞金をもらえるとも限らないのです。
「個人としては評価が高まったが、組織全体としては業績は伸びていない。」
こういうことは普通に起こりえることです。
では、業績が伸びていない中で、個人評価が高まった人への報酬の原資は、どこから捻出すればいいのでしょう?
これを実現するためには、大枠の労働分配率(利益に対する人件費の割合)を
- 「枠は多めに」
- 「実際に給与支払いは低めに」
するしかありません。
年収300万円の社員が評価が高く、5%賃金がアップすると、315万円になります。この15万円は「業績が伸びていなくても」支払うということになります。
■ 連動させるときに起こること
・・・とここまで説明をしていくと、社員数によって経営者の方の反応が変わることが多いものです。
30名以上の社員数であれば「じゃーそうしておくか」という感じなりますが、10名未満の社員数であると「うーん、業績が伸びてないのに15万円給料が増えるのはきついなぁ。。。」という感じの方も多くなります。
後者の場合は「月々の固定給の昇給率(評価連動)は小さく、業績連動のインセンティブを大きく」することをよく提案しています。
つまり、評価が高くても月々の給与の昇給は1%程度にする。(月給20万円⇒20万2千円)インセンティブは、例えば会社の粗利が1000万円とき、原資として3割の300万円。
頭割りで一人100万円。会社の粗利が1/10になれば、インセンティブも1/10の額になる、というような形です。
このように「1年間の業績に対する連動」を大きくすると、「会社の業績を上げなきゃしょうがない」という気持ちが強くなります。
これは、プラスに働けば「みんなで会社の業績をあげていこう!」という意識にしていくことができるわけです。
しかし、一方で「自分が頑張っても、評価が上がっても給料が増えるわけじゃなくて、結局会社の業績次第かぁ」と、努力する気持ちをスポイルしてしまうリスクもあります。
結局、どのような制度を作ったとしても、どういう気持ちで社員が受け取るかということはどうしても残るわけです。
この部分は、また別の機会に詳しくご紹介させていただきます。
今回のご質問に対する回答は以上となります。いかがだったでしょうか。
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[Vol.15 2018/06/26配信号、執筆:石川英明]
Vol.14 人事評価制度はなぜ必要なのですか(後編)
◆◇◆ 今回のご相談内容 ◆◇◆
いつもメルマガ拝見しています。
評価制度は、そもそも何のために必要なのでしょうか?
人が人を評価するのは、そんなに簡単ではないと思うのですが、、、
特に、小さい会社であれば、社長が「こいつは頑張っているな」などと、判断するほうが正確な評価ができるような気もします。
どうして評価制度が必要なのか、改めてご意見をいただければと思います。
◆◇◆ 石川からのご回答 ◆◇◆
「評価制度が必要な理由」はいくつかの側面から考えられます。
一つには「(適切な)人材の育成を促す仕掛け」です。
もう一つには「(不適切な)人材の離職を促す仕掛け」です。
前回のメルマガは後者について書きましたが、今回は「(適切な)人材の育成を促す仕掛け」について書きたいと思います。
■ (適切な)人材の育成を促す仕掛け
評価項目というのは「この項目を満たすことが、会社の業績向上に寄与する」ということを現したものです。
例えば、経営者がサッカーの監督だとします。
もちろん「勝つ」ことや「優勝する」ことが、チームの目標ということになります。しかし選手に「勝つ」「優勝する」だけで評価すると言われても選手は困ります。
そうなると、勝つということをもう少し分解する必要があります。
=== サッカーの試合で勝つの分解例 ===
試合に勝つ
↑
得点を増やす、失点を減らす
↑
技術力UP↑+体力UP↑+戦術理解UP↑
==================================
このように「そのために必要なこと」というものが分解されて導き出されてきます。
監督としては「技術力、体力、戦術理解力が高い選手からスタメンに起用していくよ」と言うことができます。
そして、スタメン11人。
控えの選手が12人いたとして、この控えの選手に
- 「スタメンの選手たちは、技術力5点、体力5点、戦術理解力5点の15点満点で13点以上の人たちばかりだ」
- 「君がスタメンになろうと思ったら、今の11点なのを、13点以上にしなければならない」
と伝えることができるでしょう。これが評価項目ということになります。
言われた選手の方も
- 「今自分は、技術力5+体力2+戦術理解4の11点だ。スタメンを奪うには、この体力2を、4以上にもっていかなければならない」
ということがハッキリと分かりますし、特にその練習をしよう、ということになるでしょう。
シンプルに例えるなら、評価項目と言うのはこのように機能する必要があります。
■ 自社の評価項目は何か
では、自社のビジネスにとっての「技術力・体力・戦術理解」のような項目は何なのか?
これをしっかりと考えて評価項目とする必要があります。
ある会社では
- 業界知識の勉強
- 自分なりに考える力
- 仕事のスピード
という3項目が大切だ、ということになりました。
また、別のある会社では、
- 挨拶礼儀
- 訪問件数
- コミュニケーション力
の3項目が大切だ、ということになりました。
これは、当然のことながら自社のビジネスの種類などによって変わってきます。
もう少し複雑にしていくと「営業部門はこの項目」「経理部門はこの項目」などのように別れていくでしょう。(ピッチャーなら防御率、バッターなら打率のように評価項目が変わるように)
この時に、項目が定量化できるか定性的なものになるかは、それほどこだわり過ぎないほうがよいでしょう。
定量化にこだわりすぎると、ビジネスに本当に大切なことが抜け落ちてしまう危険性があります。
例えば「挨拶礼儀」を評価項目に入れた会社がありましたが、この項目を定量的にするのは大変難しいのです。
挨拶の回数にすればいいのか?
挨拶の時の声の大きさを毎回図るのか?
回数が多ければいいというものでもないですし、大声ならいいというものでもないでしょう。実際、その回数や声のボリュームをカウントするというのも大変な負荷です。
しかし、定量化できないからと言って「挨拶礼儀」という項目は大切で外せないのです。
このような場合は、定性的なままでよいので評価項目にはしっかり入れておくことです。このように評価項目を設定していきます。
そして、社員として「この評価項目の点数が上がるように頑張ろう!」となることが大切ですし、そのために社員自らが勉強し、努力していくようになることが大切です。
上司としても「君の評価が高くなるにはね・・・」という指導をしていく、ということになります。
上司の仕事は、部下の評価を高めることです。よい評価制度がつくられていれば、これは矛盾なく言えることなのです。
部下の評価が高いということは、会社にとっていい仕事をしているということですし、上司も会社も助かる状態になっているはずですから。
(もしそうなっていないとしたら評価項目を見直す必要があります)
しかし問題はまだあります。
サッカー選手であれば「評価を上げて、スタメンになって試合に出たい」という気持ちは自然とあるものでしょう。
しかし、社員にとっては「評価を上げたい」という気持ちが自然とあるとは限らないからです。
そういう気持ちを自然と持っている社員もいるでしょうが、そうでない社員もいるわけです。
そうなってくると「評価が上がれば、給料が増える」といったような社員にとってのメリットも提示されていないといけないことになります。
しかし、この報酬と連動させるのかどうかということは、非常に難しい問題なのです。
この点については、また別の機会にお伝えしたいと思います。
2回にわたり、評価制度の役割・機能をお伝えしてきましたが、いかがだったでしょうか。感想やちょっとしたお悩みなど、お気軽にご連絡いただけますと幸いです♪
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[Vol.14 2018/06/18配信号、執筆:石川英明]
Vol.13 人事評価制度はなぜ必要なのですか(前編)
◆◇◆ 今回のご相談内容 ◆◇◆
いつもメルマガ拝見しています。
評価制度は、そもそも何のために必要なのでしょうか?
人が人を評価するのは、そんなに簡単ではないと思うのですが、、、
特に、小さい会社であれば、社長が「こいつは頑張っているな」などと、判断するほうが正確な評価ができるような気もします。
どうして評価制度が必要なのか、改めてご意見をいただければと思います。
◆◇◆ 石川からのご回答 ◆◇◆
「評価制度が必要な理由」はいくつかの側面から考えられます。
一つには「(適切な)人材の育成を促す仕掛け」です。
もう一つには「(不適切な)人材の離職を促す仕掛け」です。
今日は後者について特に解説したいと思います。
■ (不適切な)人材の離職を促す
正直なところ、自社の仕事に合わない社員に関しては「この会社にいても、全然評価は上がらないし、給料は上がらないし、転職したほうがいいのかな」というように思ってもらうことも大切です。
これは、プロスポーツの世界なら当然のことで「戦力外通告」といった制度があります。「うちの予算では、もうあなたを戦力として雇っておくことはできませんよ」ということを球団などから明確に伝えることができるわけです。
しかし、通常の企業においては「解雇」というのはそれほど簡単なことではありません。
だからと言って「雇った人材が、能力は足らないし、能力を伸ばす努力も見られない」という場合は、解雇したくなるのが多くの経営者の気持ちかと思います。
「あなたのやっていることは、低い評価しかできないし、給与をUpさせることもできません」ということを、できるだけ事実ベースで伝えていくことが必要です。
場合によっては
「この賃金は、この職位・職務に対する期待値として払っているものであり、それを満たしていないので、減給とします」
ということも、説得力を持って伝えることも必要性があります。
これは、法的なリスクを回避するためのものでもありますが、法務的な面は私の専門ではありませんので、ここでは詳述しません。
しかし、法的な面だけでなく社内の公平性、つまり他の社員が不満を持たないようにするためにもこれらの対策は大切なことになります。
引き留めておくべき優秀な人材からすれば、「なんであいつはあんなサボってるんだよ。。。」というような状況が社内にあれば、多少なりともストレスを感じるものです。
例えばですが、そこに対して「降格」といった分かりやすいメッセージが共有されれば、「ああ、ちゃんとうちの会社は信賞必罰なんだな」ということがメッセージもなるわけです。
もちろん、これはやりすぎてしまえば、恐怖政治、独裁政治のマイナス面も出てきますのでそのバランス感覚は必要になりますが。
■ マイナス面の期待値を明らかにする重要性
「褒める」「給料を上げる」という方面は、ポジティブなものですし、多少ファジーでもある程度それでOKな場合も多いわけですが、降格や減給といったものは、人間にはなかなか受け入れづらいものだからこそ、明確な基準を用意することが原則になります。
「社長のなんとなくの気分で降格させられる」といったことは、恐怖政治のマイナス面が非常に大きくなります。
お客様のことよりも社長のことを考えるようになり、疑心暗鬼で、社長のごますりを常に考えるような職場になってしまうリスクがあるわけです。(これは法的なリスクも大きい状態です)
明確に期待値が示されており、かつ「事実」として、その期待値に達していいないことが明白な場合は、それを叱ることや、注意すること、処罰することなどのハードルは下がります。
注意された側からしても、納得のいきやすいことでしょう。
例えばですが「高速道路は、時速100km以内で走ること」という期待値が明確に示され共有されており、かつ「あなたは今時速120kmで走っていました」という事実が明確な場合は、「罰金3万円です。減点2点です」と言われたら、納得しないわけにはいかないでしょう。
しかしこれが
- 「そもそも速度制限の法律が決まっていない」
- 「勝手に速度制限が50km以内に変えられていて、知らなった」
- 「警察官の気分次第で「それはスピード出しすぎ」と決められる」
などの場合は、それに対して罰則を負うことは、これは非常に承服しがたいことになるはずです。
これは、職場においても同じことです。
- 「課長職には●●ということを期待している」
- 「それを満たせない場合は、課長職を降格する場合もある」
- 「降格する場合は、課長手当も当然払われなくなる」
といったことを明確化していくことで、不適切な人材の離職を促しやすくなるわけです。
少なくとも、注意された当人にとって、よい意味で「居心地が悪くなる」わけです。
それによって転職を考えるのか、発奮して自分を成長させるのかは、その人材次第というところがありますが。
評価制度の必要性は基本的には「(適切な人材の)成長を促す仕掛け)」として存在しているべきだろうと考えますが、「(不適切な)人材の離職を促す仕掛け」という面でも必要性があり、そのためにも質の高い評価制度を構築する必要があるのだ、と経営者の方にはご理解いただきたいなと思います。
いかがだったでしょうか。次回は、「(適切な人材の)成長を促す仕掛け)」について解説していく予定です。お楽しみに!
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[Vol.13 2018/06/12配信号、執筆:石川英明]