Vol.67 リモートワーク下において社内の人間関係やチームワークを向上させるために
◆◇◆ 今回のご相談内容 ◆◇◆
2回目の緊急事態宣言もあり、あらためてリモートワークの難しさを感じています。
当初は「オンライン飲み会もできるね」という感じですが、やはり実際の飲み会とは、どうも人間関係構築の効果が全然違うようです。
社内の人間関係やチームワークを保ち、向上させていくにはどうしたらよいでしょうか。
◆◇◆ 石川からの回答 ◆◇◆
最近、似たようなご相談をいただくことが多いです。あらためてリモートワークが「当たり前」になってきたところで、対応が迫られているように感じます。
ご質問にいただいた内容に「飲み会」ということがありますが、先日、ある経営者の方とお話ししていて
新入社員が元気がなかったが、感染対策はした上で、リアルに飲みに行った。ぐっと元気になってくれた。
5回のオンライン飲み会より1回のリアル飲みだなと思った。
このようなお話もありました。
■ 関係性を育むという領域はまだまだ発展途上のオンライン化
やはりリアルで会うということは、オンラインで会うということとは違いがあります。
リアルの飲み会であると、例えば10人で飲み会をしていても「自然と」いくつかの少人数のグループに分かれて話が行われたり、隣の話し声もなんどなく聞こえていたりします。
相手がどのような「感じ」でいるかの情報量も、リアルのほうがやはり多いのです。
目的の明確なコミュニケーションにおいては、むしろオンラインのほうが効率的に行うことができるというところはあります。「オンラインになって、会議が効率的になった」という声も多く、やはりメリットも多くあります。
しかし「関係性を育む」といったような領域においては、オンラインはまだまだノウハウなども開発途上にあるように思います。
■ オンライン化で減ったのは○○
オンライン化で減ったのは雑談です。
雑談は、職場の人間関係を維持したり、回復させたり、向上させたりするために、大切な機能を担っていたのが明確になってきたように思います。
リアルな職場環境においては「会議が終わって、エレベーターに向かうまでの1分の雑談」といったものが自然発生していました。
リモートワーク環境だと、こういった場は自然には持つことができません。
飲み会に話を戻すと、10人の飲み会でも「なんとなく」隣のグループの会話に移動するとか、ちょっとトイレにたったあとに、別のグループの会話に入るとか、そういったこともしやすくありました。
これがzoomのブレイクアウトルームの移動となると、この自然さみたいなところはどうしても減ってしまいます。
雑談は、あまり意図せず行われるからこその雑談のため、「AさんとBさんは、このブレイクアウトルームに入って雑談してきてね」というような設定された場では起こりにくいわけです。
しかし、「だからオンラインではできない」とずっと文句を言っていても仕方ありません。オンラインであっても質の高い雑談が生まれるような工夫をしていくべきだと言えるでしょう。
私は、ある意味では「職場の中での雑談支援」を10年以上やってきたとも言えます。
フォーマルな業務報告などとインフォーマルな雑談の、その間にある対話というものを、いかに効果的に行うかについて試行錯誤してきました。
その中で基本的な雑談の順序、対話の順序といったものがあることを見出してきました。今回はそのポイントについて、少しご紹介したいと思います。
■ いきなり○○な話題にしても機能しにくい
関係性構築のためには、個々人のパーソナルな領域についても相互理解が深まっていくことは効果的なことではありますが、土台が整っていないと逆効果になることもあります。
まだ関係性が育まれていないところにいきなり「プライベートの話をしなさい」とオンラインの場を設けられても、ぎくしゃくしかしないでしょう。(これはリアルの場でも同様です)
ざっとですが、このようなグラデーションがあります。
普段のコミュニケーションが「業務上の指示・報告」に限られている場合、そこでいきなり「プライベートの課題」などを共有するといったことをしてもなかなか機能しません。
まずは「業務上の苦労や喜び」といったところを共有する場を設定するようにしていくとよいでしょう。
これもいきなり「業務上の苦労や喜び」だけを共有する場を切り出して設定するというよりは、これまでの「業務上の指示・報告」に追加する形で
業務上の報告は分かりました。お疲れ様。実際、この2週間の業務で、大変だったところとか、嬉しかったりしたところはどんなところだった?
のように、少しインフォーマルに振った話もしていただくというようなイメージです。
■ 目的的でない対話の時間を 業務時間内に確保している会社も
キャリアなどの未来の話」や「プライベートの趣味などのライトな話」をする時間を、業務時間内に確保している会社もあります。
このような会社では「雑談不足」のようなことはリモートワーク環境下においてもほとんど起こらずに済みます。
こういった時間を行う際には、OST(オープンスペーステクノロジー)は活用しやすい手法です。
OST(オープンスペーステクノロジー)を、簡単にご紹介すると、業務上のことでも、プライベートなことでも何でもいいので、今話したいこと、相談したいこと、聞いてみたいことなどの「話すテーマ」を一人一人に書き出してもらいます。
そしていったん全員分のテーマを出してから、テーマに興味のある人が集まって自由に対話をしていく手法です。
このような時間を、月に1回1時間とる。
そうすることで必要なインフォーマルなコミュニケーションも社内に流通しているという状態を作っていくことができます。
このような時間を、習慣・文化として持っている組織は、チームワークに困るというようなことはあまり起こらなくなってくるでしょう。
いつも最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
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[Vol.67 2021/02/09配信号、執筆:石川 英明]
Vol.66 組織のあり方を見直したいときに、まず経営者ができること
◆◇◆ 今回のご相談内容 ◆◇◆
創業17年、社員数50名ほどの中小企業の社長をやっています。
最近、『Teal組織』を読みました。
今まではそうじゃなかった会社が、これからTeal組織(ティール組織)や自律分散型組織に変わっていきたいと思っても、まず1番最初に、何から手をつけたらいいのかがわかりません。
組織のありかたを見直し、新しい組織の考え方も取り入れていきたいと思ったときに、経営者として、今すぐから実践できることは何でしょうか。
◆◇◆ 石川からの回答 ◆◇◆
■ 多くの会社で社員を繋ぎとめているものは○○
Teal組織などの自律分散型組織が、「個」を尊重しても組織がバラバラに崩壊しないのはしっかりとした組織の求心力があるからです。
この求心力のところを深めずに、単に社員一人一人の自立や自律だけを促進していってしまえば、まさに「分散」の力が強くなりすぎて、組織としては崩壊してしまいます。
多くの会社は、「会社と社員をつなぎとめるもの」として【待遇】を用いています。
待遇が、その会社の求心力となっているわけです。
なので、待遇の力が弱くなれば、社員は離れていくことになります。また「もっと好待遇の転職先がある」となれば、それでも社員は離れていきます。
■ Teal組織や自律分散型組織の要となるのは・・・
Teal組織などの自律分散型組織の要となるのは(まさに文字通り要と言っていいと思います)、ビジョンによる求心力です。
言葉としては、ビジョン、理念、パーパス、ミッション、レゾンデートル・・・などなど多数ありますが、その詳細な定義を議論することはここでは避けて、ざっくりと同じような意味だとして扱いたいと思います。
例えば「有機農法を支援することで、日本の食と食文化を守りたい」といった経営理念の会社があったとします。そこには同じような目的意識、ビジョンを持った人々が集まってきて、組織化していきます。
組織の形成期、会社の創業期からこのように始まった会社であれば「ビジョンを求心力として」経営していくことは、難しくないというか、そもそも前提として当然のことになるかと思います。
「Teal組織」や「ビジョナリーカンパニー①」で描かれている企業は、そのような企業と言ってよいでしょう。
しかし「今まではそうじゃなかったが、これからそういう会社にしていきたい」という場合はどうしたらよいでしょう?
■ 経営者にまずできることは?
このような場合には「まずは社長自身が、自分自身の経営理念を掘り下げる」ということを個人的に始められることをお勧めします。
どんな事業をしていきたいのか?
社会に対してどのような好影響を与えていきたいのか?
どんな価値が創造できる会社だと喜びがあるのか?
そういったことを、まず自分自身で掘り下げていきます。
この際に、収益は目的として考えずに、手段として考えるようにしてみてください。
「事業を健全に運営するための手段として、利益は必要」
「社員の生活を守る手段として、利益は必要」
という感じです。
そうすると例えば「社員にイキイキと働ける環境を提供したい」とか「お客さんから感謝の声をもらえた時はやっぱり嬉しい」とか、そういったことが出てきたりします。
場合によっては事業ドメインとして、例えば「農業の分野で貢献したい」とか、「不眠症の問題解決に貢献したい」とか、そういったことが出てくることもあるかと思います。
まずはこういったものを社長自身が掘り下げていく。
このことによって会社の求心力となるようなビジョンや経営理念といったものが見えてくるようになってきます。
■ ○○を掘り下げた上で会社の中に落とし込んでいく
自分自身のビジョンや情熱を深く掘り下げていって見えてきたものがあったときに、会社の現状とそれほど乖離がない場合もあれば、かなり違いがあるという場合もあるでしょう。
前者であれば、それほど気にすることもなく、深めた経営理念を、全社的に共有して言ってよいと思います。
もしかなり違いがある、という場合には、数年かけて会社を生まれ変わらせていくことや、覚悟を決めて短期的にドラスティックに会社を変革させることも、検討してみる必要があるでしょう。
いずれにせよ、トップとして「こういう理念を大切にしてやっていきたい」ということを徐々に共有していき、新しい人材を採用する際ににも、理念に共感している人材かどうかを重視して採用を行っていくようにします。
既存のメンバーは「前と違う」「前のほうがよかった」となることもあるでしょうが、これは健全な新陳代謝として捉えることが重要です。
こういった新陳代謝も起こりえますが、そのプロセスを経て残ったメンバーは「ビジョン実現に向かう同志」という面が強くなり、以前と比べてエンゲージメントも非常に高い状態になっているでしょう。
こうしたプロセスを経ることで、組織における求心力が【待遇】から【ビジョン】へと進化していきます。ビジョンが主な求心力となった組織では、自律分散的な動きが、高いレベルで機能しやすくなります。
いつも最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。
経営者自身のビジョンや理念を掘り下げる際に、なかなかひとりでは難しいという場合には、手前味噌で恐縮ですが、弊社サービスの活用もご検討いただけましたら幸いです。
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[Vol.66 2021/02/02配信号、執筆:石川 英明]
Vol.65 Teal組織(ティール組織)へ変革していくためのステップとは
◆◇◆ 今回のご相談内容 ◆◇◆
Teal組織や、自己組織化、ホラクラシー経営など、キーワードに触れることはあるのですが、具体的にどうしたらよいものかがよく分かりません。「最初からそういう会社ならできるのか、、、」と思うところもあります。
自社がTeal組織に移行していくために、各ステップでやるべきことや重要な考え方についてより詳しく教えていただきたいです。
◆◇◆ 石川からの回答 ◆◇◆
ご相談ありがとうございます。
様々な経営理論が次々と出てきますし、それを「自社で実践する」となると、具体的にどうしたらよいのか?と迷われることも多いかと思います。
様々な企業の変革をお手伝いしてきた経験上、「一気に変える」ということはなかなか難しいものがあります。急ぎすぎると、副作用のようなものが噴出してしまうということもあります。
まずは無理のないところから、徐々に取り組んでいくとよいかと思います。
前回の相談内容とも重なりますが、今回は組織がTeal組織へ移行していく際に各ステップで重要となる考え方を解説したいと思います。
※ Teal組織(ティール組織)とは
■ まずはOrange組織的なチームワークを発揮するところから
Teal的な状態になっていると「チームワーク」もよいというようになります。共有された目的に向かって、自然と協力し合うというような状態です。
それ故に「では社内のチームワークを高めよう」として、例えばアメとムチを使って、チームワークを高めようということになったりします。
このアメとムチというのはTeal組織でいうOrange組織の特徴です。
Orange(オレンジ)組織:
ヒエラルキーは存在するが、成果を出せば昇進可能
例えば評価制度に「チームワーク」ということを組み込みます。そうすると、Orange組織的なチームワークは発揮されることになります。
つまり「他を助けないと、罰が待っているから助ける」とか「他を助けると、自分の評価が上がるから助ける」というような思考パタン、行動パタンです。
しかし、Teal組織におけるチームワークはそれとは違います。「(他者からの)評価が上がったり下がったりするから」他の人や、他の部署を助けるわけではありません。
自組織の目的を遂行するために、必要なことをはするし、必要なければしない。ただそれだけのことなのです。
■ Orange組織から一足飛びにTeal組織になることは難しい
ちなみにTeal組織の観念でいうと、Green組織は「仲間なんだから助け合おう」というニュアンスになります。これはまた、Teal組織におけるチームワークとはニュアンスが異なります。
Green(グリーン)組織:
主体性が発揮しやすく多様性が認められる
こう考えていくと「Teal組織にしていきたい」と考えたときに、例えば一つチームワークという要素をとっても「今の自組織が、どの色の組織なのか」ということは考える必要があります。
というのも、一足飛びにTeal組織になることは不可能とは言わないまでも、かなり難しいからです。
Orange組織が、Green組織を飛び越えて、いきなりTeal組織になる、ということはまずありません。
もしOrange組織的な「アメとムチによるチームワークの誘導」が自社の現状だとしたら、まず考えるべきことは「自然な仲間意識による助け合い」の醸成だと言えます。
「自然な仲間意識による助け合い」を醸成するには、前回お話しした「感情の流通」も必要になってきます。特にチームワークにおいては「お互いの苦労を理解しあう」ということが効果的です。
「ああ、この部署ではそんな苦労があるのか」としみじみ実感される(実感されるということは感情が流通しているということになります)ということが、仲間意識を醸成していくことになります。
「ああ、他の部署がこうやって頑張ってくれてて、全体の仕事が成り立ってるんだな」ということが、理解され、心からそう思うと「一緒にやっている仲間に迷惑かけないようにしよう」とか「できるだけ仲間を助けよう」といった意識が自然と発生してきます。
■ Green組織まで進んだら・・・
「自然な仲間意識による助け合い」の文化が浸透してきたら、次はいよいよGreen組織からTeal組織へとなってきます。Teal組織的なチームワークは、私の理解では、Green組織的なチームワークとは異なっています。
ちょっと抽象的な表現になりますが、
Orange組織→「助け合うと評価されるから助け合う」
Green組織→「仲間だから助け合う」
Teal組織→「目的の遂行に必要なことをする」
という感じです。
Teal組織のメンバーにおいては「仲間だから助ける」ということはもはや当たり前というか、そんなに考えるべきことでもありません。というよりも「他者を助ける」という感覚は乏しくなってきます。
というのは「一人一人、自律した存在である」という認識が強いので、「助けるべき弱者」みたいな対象としてメンバーを認識することが少ないからです。
とは言っても業務を遂行していると「特定の部署に過度に負担が偏っている」みたいなことが生じることはあります。
そういうときにTeal組織のメンバーは「あの部署のメンバーがかわいそうだから」助けよう、という風に考えるというよりは、「目的を達成するためには、この状態は健全ではない」という発想に基づいて、考え、動いていくことになります。
それが結果として「当該部署の応援にみんなで行く」になるかもしれませんが、「そもそも業務フローを見直す」「部署の役割分担を見直す」「人員配置数を見直す」など、そういうことをしようという発想が多くなるのがTeal組織の特徴と言えるでしょう。
このような思考パタンの組織にしていこうと思うと、そのためには「お互いの苦労話を共有する」とはまた違ったアクションが必要になります。
そのアクションは「我々の存在意義は何か?」ということを、頻繁に問う時間を持つということになります。
そのことによって「自組織の目的」ミッション、ビジョン、パーパス、レゾンデートル・・・といったことに"向かって"思考する、行動するという文化が醸成されていくわけです。
いつも最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
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[Vol.65 2021/1/26配信号、執筆:石川 英明]