組織のお悩みQ&A

「社員が同じミスを繰り返す…」「会議で活発な議論が生まれない…」「評価制度がイマイチ機能してない感じがする…」「部下が同じミスばかり繰り返す…」 組織運営上のあらゆるお悩みについて、100社以上を支援してきた組織コンサルタントの石川がお答えしていきます!

Vol.28 後継者が育たない



◆◇◆ 今回のご相談内容 ◆◇◆

自分がこれまで引っ張って事業を回してきました。

しかし、先のことを考え始めると、後継人材が育っていなく、自分が引退するとなったらどうなってしまっているだろう…と思います。

まずは幹部をちゃんと育成していきたいと思いますが、どのような点に気を付けて、何をしていくべきでしょうか?

 
◆◇◆ 石川からのご回答 ◆◇◆

特に中小企業においては、社長が「エースで4番」といった活躍をすることによって、会社が発展し、守られている、という状態はしばしば見受けられます。


このときに、とても単純な一つのサイクルが回っています。

 

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社長が頑張って結果を出す
⇒社員が頼るようになる
⇒社員が頼りない
⇒社長が頑張って結果を出す

というサイクルです。

 

このサイクルを回している間は「頼りがいのある社員」は出てきません。


では、どうすればよいのか。


「自分で変えられるところから変える」というのが、変化を起こす原則ですから、「頑張って結果を出す社長」と「社長を頼ってしまう社員」であれば、「頑張って結果を出す社長」の方を変える、ということになります。

 
■ 「頑張らない」を頑張る

何をどう変えるかというと「自分で頑張らないようにする」ということです。

頑張らないことを、頑張る、という感じになります。

 

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社長は頑張らずに社員に任せる
⇒任された社員が期待を感じて頑張る
⇒社員が頑張って結果を出す
⇒社長はますます社員に任せられるようになる

このサイクルを回していく、ということになります。


しかし、今まで社長に頼りきりだった社員が、「任せる」だけで、いきなり「期待を感じて頑張る、かつ結果を出す」までいくかというと、ここが難しいところです。

ここで任せ方のコツが大切になってきます。

 


フロー体験理論という心理学の理論があります。

これは人が「集中できる、頑張れる」状態について研究したものですが、集中のための一つの大きな要素は【能力と難易度の適切なバランス】です。

 

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つまり、任せるときに「それは無理だ・・・」「そんなこといきなり言われても・・・」と難易度の高すぎるものを任せてはいけないのです。


難易度が高すぎると、人は「不安」に陥り、集中力が低下します。逆に難易度が低すぎると、人は「退屈」に陥り、これまた集中力が低下します。

(自分の実力にとって)適切な難易度のものに取り組めることで、人は集中力を発揮しやすくなるのです。


ですから例えば「この1年の黒字を作るのを、全面的に任せた!」という任せ方が、部下にとって「不安」なものだとしたら、「まずは半年やってみよう」「まずは3ヶ月やってみよう」とハードルを下げていきます。


他にも例えば、あるお客様の案件を「丸ごと担当してもらう」という任せ方だと難易度が高すぎるようでしたら「一部分については代わりにやってもらう」という任せ方をしていきます。

 

【参考】

co-ducation.com

 

■ 内発的な目標が大切

フロー体験理論で、人が集中力を発揮するのにもう一つ重要な要素として示されているのが【明確な目的】です。

やる本人にとって「それをやる意味がある」「それをぜひ実現したい」という気持ちが感じられることが重要です。


「任せる」ことを進めていく上で、「では、今まで私(社長)がやってきた業務の一部をこれから任せていきます」という言葉だけで「それをやる意味がある」「それはぜひやらせて欲しい!」と社員がなるのであれば何の問題もありません。

しかし、もし「え、仕事量増えるのかな・・・」「なんで急に仕事の範囲が増えちゃうんだろう・・・」などという捉え方しかできないことがあるとしたら、それは本人にとって【明確な目的】になっていません。


例えば「1年かけて権限移譲を進めていきます。ちゃんと仕事がこなせたら、部長に昇格してもらいます」といったことも告げたとします。

そしてこれで「部長に昇格して、昇給もできるのなら頑張りたい!」と思えるなら、本人にとってその仕事に真剣に取り組む【明確な目的】ができたことになります。


もし、これを告げても「え…部長にはなりたくないな、大変そうだし…」というような人材であれば、極端な話、1年間権限移譲を進めてきても「やっぱりこの社員には任せられないな」となって、「やっぱり1年やってきましたが、あなたには部長はやらせられません」と伝えたときに「ああ、よかった、これで部長にならないですむ」と本心では思う、というようなことすら起こりえます。


ですから、本当に本人にとって【明確な目的】になっているのか、その心の内側の部分が大切ということになります。

 
■ 失敗をマネジメントする

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「任せる」を始めていくと、社長自身がやっていたようには上手にできずに「失敗」が起こるようになってきます。この「失敗」はゼロにはならないと考えるべきです。

むしろ積極的に失敗を経験させて、そこから学んで成長してもらうことが重要です。

 

「ああ、こういうことになってしまうのか」「ああ、こうしたら上手くいくんだな」ということを、体験的に学習して、成長していくのです。

体験的に学んだことほど、身につくことはありません。


しかし、会社全体の経営が傾くほどの失敗をされてしまうと、取り返しのつかないことになってしまいます。ですから「このレベルの失敗は避けなければならない」というものも洗い出しておきます。


そして、そのレベルの失敗にはならないよう、先回りして上手くいくようにおぜん立てをしておいたり、バックアップの体制を整えておいたりすることが必要になります。

その「失敗バックアップ体制」を敷いたうえで「どうぞこのレベルの失敗は体験して、体験から学習して成長してください」という状態を整えておくことが理想的です。

 

■ 成長してくると・・・

自分の裁量が増え、自分の裁量の中での成功体験が増えてくると、人は「もっと大きな挑戦をしたい」といった欲求が生じるものです。


社長に頼りきりで、指示されたことをやるという受身的だった社員が、自分で考えて、自分なりに次の目標を設定して、動いていく…ということが生じてきます。

いきなり100%そういう人材にならなくても、徐々にその自発性や能動性といったものの割合が高まってきます。


そうして「頼もしい社員」が増えてきます。


ちなみにここで一つ落とし穴があります。

頼もしい社員が増えてくると、社長は「頼られなく」なってきます。社員はどんどん自立し、社長に頼ることも、相談することも減ってきます。これは率直に言って一つ「寂しい」ことでもあります。


もし寂しくなって「なんだ最近、みんな社長を軽視しているのか!」「勝手にどんどんやってしまって!」というような怒りに転換してしまうと、またサイクルが逆戻りしていってしまいます。社長が頑張って、社員が社長を頼る、というサイクルです。


この寂しさを「ああ寂しいなぁ。でも、社員が成長した証だから、嬉しいことでもあるなぁ」と両面から、素直に感じられると社員の成長もその後もスムースに進んでいくことになります。

 

ご質問に対する回答は以上となります。

いつも最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。

 

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[Vol.28 2020/03/10配信号、執筆:石川英明]