組織のお悩みQ&A

「社員が同じミスを繰り返す…」「会議で活発な議論が生まれない…」「評価制度がイマイチ機能してない感じがする…」「部下が同じミスばかり繰り返す…」 組織運営上のあらゆるお悩みについて、100社以上を支援してきた組織コンサルタントの石川がお答えしていきます!

Vol.29 在宅勤務やリモートワークのメリットとデメリット



◆◇◆ 今回のご相談内容 ◆◇◆

 新型コロナウイルスの影響により、在宅勤務、リモートワークやテレワークといった働き方がこれまで以上に、急速に広まっています。

今は時差出勤というカタチで対応していますが、弊社でも本格的に在宅勤務やリモートワークの導入を検討したいと考えております。

いろいろな組織を知っている石川さんから見て在宅勤務やリモートワークのメリットやデメリット、また本質的なポイントはどのようなところですか。

 
◆◇◆ 石川からの回答 ◆◇◆ 

はじめに、もし実際に導入される際におススメのツールについては、先日【番外編】で本田よりご紹介しておりますので、よろしければ、そちらもご参照ください。

 

co-ducation.com

 
■ 在宅勤務やリモートワークのメリット

これはもう間違いなく「通勤電車」から解放されることです。

 

ラッシュ時の通勤電車のストレスはどれほどでしょう!

片道1時間かけて通勤しているとしたら、1日で2時間の「通勤時間」がまるごと空きます。通勤時間を実質的な「勤務時間」と感じている人も多いでしょうから、その人たちからすると「勤務時間」が毎日2時間短くなることにもなります!

これほど劇的にワークライフバランスが良くなる施策もなかなかありません。


単純に時間だけではなく、ストレスという観点も重要です。

 

特に東京都心の朝のラッシュはもの凄いものがあります。

通勤電車の中で、体力も、精神力も大幅に削られてから仕事を始める・・・というようなことが普通になってしまっている人たちもたくさんいるでしょう。

朝起きて、一度「元気が削られるイベント」を必ず経てから仕事を始める、というのはどう考えてもいいことではありません。

朝起きて、睡眠という充電を経て元気いっぱいのところから仕事を始められる・・・それだけでも生産性に大きなプラスの影響を与えるでしょう。

 

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私の周りで実際に、リモートワーク中心にシフトしていった人たちはこの効果の実感を口々に言います。そしてほとんどの人が「もう通勤電車には戻れない・・・」と言います。

リモートワークのメリットがたった一つこれだけだったとしても、この一つだけのためにでもリモートワークを推進していく価値はあると思います。

 

■ 在宅勤務やリモートワークのデメリット

正直なところ「リモートワーク」そのもののデメリットはほとんど思い浮かびませんが(リモートワークに慣れないことで生じる問題はあるでしょうが)、会社でリモートワーク化を進めていく際の壁のようなものはあります。

 

例えば店舗型の業務についてはリモートワーク化していくことが難しいでしょう。

私のお客様で通販企業様がいますが、企画部門はリモートワーク化が簡単でも、社内にコールセンター部門や発送業務部門を持っているため、こちらの部署はリモートワーク化が難しくなっています。

 

そうなると「こっちの部署では出社しなくていい。通勤電車にのらなくていい」「こっちの部署は出社しないといけない」といった不平等感が生じることはあります。

この不平等感が原因で、会社全体としての連携やチームワークがマイナスになっていってしまうリスクというのはあります。


リモートワーク化できない業務というのはあります。その業務について、どのような思想で対応するのかどうか、は考える必要があります。

例えば「出社の必要な業務については、全社員が持ち回りで担当することにする」という対応も考えられるでしょうし、「出社が必要な業務については、別会社化し、賃金体系も別のものにする」といった対応もありえるでしょう。

 

こういったことを「考える必要が出てくる」ということが、デメリットと言えばデメリットかもしれませんが、これをデメリットとするかどうかは、個社ごとの対応次第とも言えます。


人によって「出社する」ということで仕事のスイッチのオンオフができる、メリハリを持てるという人もいます。だから出社したい、という人です。

これは広義のリモートワークになるかと思いますが、そういう人向けに「出社する場所」も用意することも可能です。家を出て、最寄り駅のシェアオフィスで仕事をするとか、カフェで仕事をする、とかということになります。


セキュリティについては気になる部分もあるかと思います。例えば、顧客の機密情報を、カフェでパソコンを開いて閲覧してよいものか、ということです。

これについては議論は必要だと思います。

社内で仕事をしていても、情報が盗み出されるリスクというのはありますから「外は危ない。内は危なくない」という単純な話にはなりません。

 

外で仕事をして増えるリスクは「画面を見られる」ということと、「そもそも機器を置き忘れる」といったことですが、この前者については画面のフィルターなどでもかなりの部分防げるところがあると思います。

「カフェで仕事をしても良いが、背中側が壁の席にしか座ってはいけない」とか「隣の席との間隔が1m以上あるカフェでなければならない」などの取り決めもあってもいいかもしれません。

 

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■ 在宅勤務やリモートワークの本質

 リモートワークを推進していこうとすると「社員がちゃんと仕事しているかどうかをちゃんと管理できるのか」といった不安がよく出てくると聞きます。

 

正直なところ、そのような不安が出てくるということ自体が驚きではあります。

そのような不安が出てくると言うことは「オフィスに出社していれば社員がちゃんと仕事をしているかどうか管理できている」と思っているわけで、「オフィスに出社しないで、顔が見えなければ管理ができなくなる」と考えるから、不安になるわけですね。


「オフィスに出社していれば、社員がちゃんと仕事をしているかどうか管理できている」と思うというのは大変驚きです。

 

例えば課長がいて、その部下が5人いたとして、その部下の1日8時間の労働をどれほど監視しているというのでしょうか?

40人時を監視することなど、理屈の上からも無理があります。


例えば、自分が会議で抜けている間、2時間はどうなのでしょう?

その2時間の働きぶりは気にならないけれど、リモートでの2時間やっていることが見えないと不安になる、というのは理論としてはおかしなところがあります。

 

オフィスで課長1名、部下5名の6人がずっと揃っている状態自体がまずどれほどあるかとうことです。外資系の企業などはパーティションで区切って半個室状態で仕事をしているところもあるほどです。


百歩譲って「社員の顔が見えるから」というのは、確かに一つあるかもしれません。

真剣に仕事をしているのか、居眠りをしているのか、顔が見えている時間であれば、ある程度把握もできるかもしれません。

しかし、パソコンの前に真剣な顔をして座っていたとしても、全然違うネットの記事を読んでいるかもしれませんし、その「全然違うネットの記事を読んでいる」ということが、本当に会社のためにならないのかというと、この判断も実は難しいところがあります。


実際には、オフィスで顔を合わせていたからと言って、一人一人の仕事っぷりをそれほど細かく監視もできていなければ、管理もできていないはずです。

そして、それで問題があるかというと、むしろその方がいいのです。

会議中であっても、社員は仕事をしているはずですし、ちょっとぼーっとしている時間があっても、休憩して、リフレッシュして、仕事をすればそれでOKなわけです。

 

そもそも欲しいのは「行動」なのか「成果」なのかというと、理屈でいうと上司が欲しいのは成果のはずです。

だから、行動を管理したいという衝動そのものが「マネジメント」としてズレてしまっているということになります。

 

部下に「出してほしい成果と期限」を伝えて、適切にデリゲーションを普段からしているようであれば、「今日明日、ちょっと出張でいないからよろしく」ということでも、普通に成立しているはずです。

「今日明日、ちょっと出張でいないから」というのは、ある意味ではリモートワークです。


ですから、リモートワークだと部下を適切に管理できるか不安だという管理職が多い場合には「そもそも、今の環境下においても、適切にマネジメントをしているのか?できているのか?」をこそチェックすべきです。

 

■ リモートワークにおける「個室」と「障子」

 日本人はもともと襖や障子という曖昧なもので部屋を区切ってきました。隣の部屋の音や気配が感じられるような家の作りです。そして日本のオフィスはオープンなオフィスがほとんどです。

海外の企業では、一人一人の席がパーティションで区切られているというところも多々あります。

日本のこのような特徴もあって、リモートワークになって「顔が見えない」ということに、そこはかとかない不安を感じたりするところがあります。

 

 

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リモートワークを推進していくと、「これがなくなってしまうのではないか?」という不安の一つが雑談などのちょっとした声がけです。


会議、に関しては不安もあるかもしれませんが、zoomなどのオンラインビデオ会議システムを使えばほほ問題がないことはすぐに体感されることでしょう。


会議であれば「何時から、こんな議題で集まって話しましょう」ということを設定できますし、それによってzoomなどで会議をすればOKです。

「会議室にいく」というのが「zoomにログインする」に変わるだけで、それほど困ることもないと思います。(むしろ、録画ができるなど、議事録に関してラクになるなどのメリットの大きさを感じることが多いと思います)

 

※ 会議の仕方そのものについてはここでは詳述しませんが、zoomでは「発言している人」が画面で大きくなるようになります。「同時喋っている」ということが起こると、実際の会議室以上に「訳が分からなく」なります。そして多くの場合、必然的に「一人の人がちゃんと最後まで発言する」「周りは最後まで聞く」というコミュニケーションになりやすくなります。

 


在宅勤務やリモートワークは「全員が壁でさえぎられた個室で仕事をしている」というような状態に近くなります。

この“壁”を襖や障子といった日本的なレベルのものに押し下げてくれるのが、様々なツールで提供されているチャット機能です。

 

グループウェア掲示板に誰かが投稿したというアラーム音がなったりします。そうすると「気配」がするわけです。あ、他の人も働いているんだ、という気配がします。

この気配を感じられるような仕組みを整えてあげることも、リモートワークを推進していく上では大切なことになってくるでしょう。

 

 

■ リモートワークの本質的なデメリット

 Amazonで本を買うので、本屋に行かなくなった、という人は多いのではないかと思います。私もその一人です。しかしやっぱり「本屋にしかない魅力」があります。

それは「自分の顕在意識にない本との出会い」です。


どうしてもamazonなどでは能動的に「検索」して本を探すことになりますし、レコメンドも自分と似た価値観、ニーズに沿った本がレコメンドされてきます。

しかし本屋に行くと「世の中の人はこんな本を読んでいるのか!すごい平積みだ!」とか「うわー、こんな本があるのか!」といった発見があります。


自分の価値観とは違う、本屋さんそのものの“売り”や、社会全体の“人気”などが見えてきたりします。そういう能力はまだまだ「町の本屋さん」にネットは敵わないと感じています。


本屋に行かないことで「新たな出会い」は減る。それと同じような感覚で、仕組みやツールで多少は工夫ができても、“雑談”というすごい価値ある場がなくなる。

これがリモートワークの本質的なデメリットだと、私は考えています。


今回の質問に対する回答は以上となります。
いつも最後までご覧いただき、ありがとうございます。

 

 

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[Vol.29 2020/03/17配信号、執筆:石川 英明]