組織のお悩みQ&A

「社員が同じミスを繰り返す…」「会議で活発な議論が生まれない…」「評価制度がイマイチ機能してない感じがする…」「部下が同じミスばかり繰り返す…」 組織運営上のあらゆるお悩みについて、100社以上を支援してきた組織コンサルタントの石川がお答えしていきます!

Vol.23 部下の悩み相談にどこまでのるべきでしょうか



◆◇◆ 今回のご相談内容 ◆◇◆

部下から「Aさんに対して、上司から注意してください」という相談がよく持ち込まれるのですが、どのように対処したらよいでしょうか?

 
◆◇◆ 石川からのご回答 ◆◇◆

「困りごとは、誰かの頼んで解決してもらう」という習慣が染みついている人が多い現状はあると思います。


例えば小学校で「授業の邪魔をするクラスメイト」がいたとしたら、それに対処すべきは担任の先生であって、生徒たちではない、という学校が多いでしょう。

責任は先生にあるので、先生に「あの子を何とかしてください」という話が持ち込まれます。

当事者同士で話し合って解決するといった力は蓄えられてきていません。経験する機会がほとんどないからです。

 

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そのまま大人になり社会人になっていくので、会社に入っても、感覚的には学校と同じです。

「先生、あの子をどうにかしてください」が「部長、あの人をどうにかしてください」に変わるだけです。


しかしだからと言って、それをそのまま受け入れていたら、いつまで経っても「先生と生徒」のような関係から抜け出すことができず「プロとプロの関係」という感じにはなっていけません。


個人や組織の成熟性を高めていくためにも、「先生役はやりませんよ」「自分たちで話し合って解決していける大人ですよね」という態度で接していくことは大切かと思います。

 
■ ほとんど自動的に「先生役」を期待される

このいつの間にか先生役を背負わされてしまうというのは、ほとんど自動的に、無意識のうちに成立してしまいます。

ですので、かなり意識をして、それを拒否しなければ、そのまま「先生と生徒」という状態になっていくのです。


意見の違いがあるときに、ちゃんと当事者同士で話し合って解決する力を、社員自身が持てるように育成していくことが大切です。


「当事者同士で話し合って解決する」という力が磨かれていかなければ、いつまでたっても中小企業の役員たちは「簡易な家庭裁判所」みたいな役割をしなければいけなくなってしまいます。


そのまず一歩目が「私からは言わないので、直接本人に伝えてみてください」と、相談をもちかけてきた部下に返すことです。

「どうして部長から言ってくれないのですか!」というような反発が出てくることも想像されますが、それにはこう返すことが正論になります。


「もしAが正しくて、Bが間違っているのなら、それは直接Aが正しいのでAにしてくださいと、貴方自身が相手に伝えることに何の問題もないです。

そこに部長の権威みたいなものを持ちだす必要がありません。だって、Aが正しいのは論理の問題であって、権威の問題ではないわけですからね。

 

もし、AとBは正しいとか間違っているとかじゃなくて、好みの違い、価値観の違いなのだとしたら、これまた部長と言う権威の出てくる幕じゃありません。

価値観の違いはありえるわけですから、これも当事者同士で調整するべきものです」


一言一句の言葉遣いはさておき、意味内容的には、このことは前提としておくとよいかと思います。

 

■ ”議論”が下手な日本人・・・

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さて「上司から言ってもらう」方法を使えなかった社員は、仕方なく自分で相手のところに行って話し合いをするしかなくなるわけですが、、、


ここで多くの社員は不安やストレスを感じることでしょう。


「反論されるんじゃないか」
「喧嘩になるんじゃないか」
「角がたつんじゃないか。。。」
「人間関係が悪くなりはしないか。。。」


こういったことが不安になり「ならいっそ、言わずにこっちが我慢するか。。。」というような選択をしてしまうこともあるだろうと思います。

 

危険なのは「不満を相手に言わなかったのは自分の選択、自分の責任」と思わずに「上司が言ってくれないから。それで会社からダメなところがなくならないんだ」と他責的思考で処理してしまうことです。


これを防ぐためには、社員の議論力を伸ばしていけるよう、成長を支援する必要があります。

なにせ多くの社員が「議論をぶつけ合う」というようなコミュニケーションについて、ちゃんとトレーニングをしたことがないのですから、どうしてもこういう支援も必要になります。

 
■ コミュニケーションについてのコーチングをする

「じゃー、自分でAさんに言ってみてね」

「はい・・・・」

「うん、不安そうだね(笑)自分で言うとなると、何か不安なことでもあるかな?」

 

…というように、コーチングをしていきます。


「はい……いや、私から言うとなると、”それはあなたの好みでしょう。私はこのほうがやりやすい”とかって言われてしまいそうで……」

「うんうん。好みの違いだから、しょうがないって言われちゃいそうなんだね。じゃー、そのままのやり方を続けるのでいいのかな?」

「いや、、、それだとやっぱり私の方はとても困ります。すごくそれだと私の方がやりにくいので。。。」

「どこがやりにくく感じていて、どれくらい時間がかかってしまっていて、どういうやり方にしてもらえると、これくらい時間が減らせる・・・みたいなことを具体的に伝えてみたら?」

「そうですね。。。まずちょっと具体的に整理してみます。」

 

「それで、話し合いができそう?」

「……、でもやり方を変えるのは私にはメリットがあるけど、向こうにはないじゃないですか……やっぱり”今まで通りでいいじゃないか”と言われてしまいそうで。。。」

「うんうん、そりゃwin-winのほうがいいよね。相手に提示できるメリットも探してみたら?」

「はい。あ、空いた時間で、逆にAさんが苦手にしてるXをもうちょっと手伝えるとかもありそうです!ちょっと考えてみます!」

「うんうん。いい話し合いができるといいね!」

 

■ 一人一人が大人になることで、大人な組織になっていく

大切なことは、一人一人に大人になっていってもらう、成熟していってもらうことです。一人一人の意識や、コミュニケーション技術が幼いままでは、組織の成熟化は進んでいきません。


逆に、一人一人の社員が「何か問題があったら、自分たちで話し合って解決する」と思っていたら、それはとてもプロ意識の高い、成熟度の高い組織であるということができると思います。


それらを促進していくには、社員を子ども扱いしないことが大切です。

 

「大人なんだから、自分でできるでしょう」という前提で接する。

そのことによって、大人としての責任が自覚されるようになり、経験が増え、必要なコミュニケーションの技術も磨かれていくことになります。

 

「部下の相談に乗らない」ことで、組織を成熟化させていくということも、ぜひ選択肢として検討してみて頂きたいと思います。

 


ご質問に対する回答は以上となります。

いつも最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。

 

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[Vol.23 2020/02/04配信号、執筆:石川英明]